「強く抗議する」米上空に飛来の“中国・気球”墜落に対し、政府は強い姿勢を表明。市場は懸念から香港ハンセン指数が3日続落 (画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 21,222.16 pt (▲2.02%)
中国本土株指数7,189.37 pt (▲2.68%)
レッドチップ指数  3,890.65 pt (▲1.37%)
売買代金1,360億2百万HK$(前日1,299億6百万HK$)

米雇用統計・失業率ともに大幅に改善

先週金曜日3日に米労働省が発表した1月の米雇用統計は、非農業部門雇用者が51.7万人と事前予想の18.7万人から3倍近い大幅な雇用者数増加となった。失業率も3.4%と12月の3.5%から改善し、1969年以来53年ぶりの低水準となった。

 

昨年22年1月も事前予想から31.7万人も乖離しており、今回(33.0万人)同様の大きな幅がみられた。アマゾンなどITテック企業のレイオフ計画や1月の季節調整などの季節要因がブレを生じさせたとの指摘もあるが、雇用者数の数字は積み上げられており、絶対数のある確かなものだろう。

 

いずれにしても今回のデータは米労働市場の著しい強さが改めて示され、人手不足による賃金上昇からインフレ圧力も容易には緩まない可能性を示唆した形となった。

 

一方、1月の労働参加率は62.4%とパンデミック前の63.4%を下回る水準にはあるもの、前月から上昇し、徐々に回復基調が続いている。賃金の上昇率についても、一段と緩やかになった傾向がみられるが、賃金上昇圧力緩和の兆候には時間を要するものとみられる。


先週のFOMC後のパウエル議長の会見では「ディスインフレの初期段階である」と金利を引き上げてきた効果が現れ、インフレ抑制につながりつつあるとの認識を示した発言が注目された。

 

一連の発言はFRBが早くて今年6月に利上げを停止するとの観測から株式市場を大きく押し上げた。ただ、最新の雇用統計では労働市場はなおも過熱していることは、当面利上げを続くことを支援するとともに、0.25%の利上げを少なくともあと2回行うとの見通しが強まっている。

 

市場が織り込んでいる利上げの回数は、0.25%幅を1回であるという見方は早くも打ち砕かれた格好となり、引き続きインフレ率の動向次第だが、楽観的な見通しは厳しいものとみられる。

香港ハンセン指数は3日続落

6日の香港市場は、上述した強い雇用統計の結果を受けて利上げサイクル前倒しの期待が弱まったほか、週末に米本土上空に飛来した中国の気球墜落を受けて、中国外交部は「無人飛行船を撃墜したことを断固として反対し、強く抗議する」と発表するなど市場にとってネガティブな材料が続いた。

 

ハンセン指数は朝方、弱く推移すると幅広いセクターで売りが優勢となり前日比2.02%安と3日続落した。

 

ハイテク株で構成されるハンセンテック指数は同3.65%安と続落。1銘柄を除いて構成銘柄は全面安となり、高性能データセンター開発の万国数拠(9698)は8.7%安、ソフトウエア開発の明源雲集団(0909)は7.8%安、インターネット保険の衆安在線財産保険(6060)は7.3%安、インターネット保険の衆安在線財産保険(6060)は7.2%安と下げが目立った。

 

中国の不動産に対する不透明な見通しから、不動産株で構成されるハンセン不動産指数は連日で大幅安となり前日比3.23%安。不動産サービスの碧桂園服務(6098)は6.1%安、不動産開発の時代中国(1233)は8.6%安、龍光集團(3380)は6.2%安,鼎豊集団(6878)は6.0%安と下げた。

 

主要銘柄も売り優勢となり、フードデリバリーの美団(3690)は5.0%安、スマートフォンの小米集団(1810)は4.9%安、香港取引所(0388)は4.2%安、Eコマースの京東集団(9618)は3.6%安、アリババ(9988)は2.7%安だった。

 

中国本土株市場は上海総合指数は前日比0.76%安の3,238.70と続落、CSI300は同1.32%安の4,086.88だった。

 

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

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    Wells Global Asset Management Limited, CEO最高経営責任者 国際金融ストラテジスト <在香港>

    京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

    シティバンク東京支店及びニューヨーク本店にて、資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現:MUFG 銀行)に移籍し、リテール部門のマーケティング責任者、2009年からはアジアでのウエルスマネージメント事業を率いて2010年には香港で同事業を立ち上げた。その後、独立して、2015年には香港金融管理局からRestricted Bank Licence(限定銀行ライセンス)を取得し、Nippon Wealth Limitedを創業、資産運用を専業とする銀行のトップとして経営を担った。
    2021年5月には再び独立し、Wells Global Asset Management Limitedを設立。香港証券先物委員会から証券業務・運用業務のライセンスを取得して、アジアの発展を見据えた富裕層向けサービスを提供している。(香港SFC CE No. BIS009)
    世界の投資機会や投資戦略、資産防衛にも精通。個人公式サイトなどを通じて、金融・投資啓蒙にも取り組んでいる。

    ● 個人公式サイト
     「HASEKENHK.com」(https://hasekenhk.com/)

    著者紹介

    連載国際金融ストラテジスト長谷川建一の「香港・中国市場Daily」

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