(※写真はイメージです/PIXTA)

「お金って何? なぜあるの?」「お金はどこから来るの?」…もし子どもから質問されたら、どのように答えるとよいのでしょうか。アメリカでロング&ベストセラーになっている「お金の入門書」、ディリン・レドリング氏/アリソン・トム氏による共著『父と母がわが子に贈るお金の話 人生でもっとも大切な貯める力、増やす力』(小野寺貴子訳、SBクリエイティブ)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

なぜ「お金」が作られるようになったのか?

■お金が作られるようになる前は、「物々交換」で欲しいものを得ていた

私たちはみんな、大して欲しくないものや、必要のないものを買って無駄遣いしてしまうことがある。例えば、安物のおもちゃを買ってきて、家で遊び始めたらすぐに壊れてしまったとか。あるいは、欲しくてしかたなかったテレビゲームを買ったものの、実際はそんなに遊ばなかったとか。あるいは、お店で売っているお菓子がとってもおいしそうだったから買って食べてみたら、とってもまずかったことはない? そんなとき、大人たちは「まったく無駄遣いして! お金のなる木はないのよ!」と怒るよね。きみも言われたことがあるって? でも、本当のところ、お金はどこからやってくるんだろう?

 

その答えをきちんと理解するには、少しばかり歴史の勉強をしなければならないよ。何千年も昔、人々は物々交換というものをしていた。つまり、自分が持っているものと同じくらいの価値のものを交換していたんだ。例えば、農家の人は、生活に必要なもの(道具や陶器)を手に入れるために、自分たちが育てた家畜(ヤギなど)と交換していた。

 

■物々交換が進化して、香辛料や塩、種などを交換するようになったけれど…

でも、この物々交換はいつもうまくいくわけではないということは、何となく分かるだろう? きみが自分のまんがと友達の自転車を交換するとしよう。自転車1台を手に入れるには、大切なまんがを何十冊も手放さなきゃいけないんだよ!

 

間もなくして、人々は生活に欠かせない日用品をお金として使うようになった。お金として使われたのは、みんなが必要としていて定期的に使うものだ。例えば、香辛料や塩、作物の種とかね。道具や食糧を買うときに、1袋の種と交換した方が、ヤギを連れていくよりも便利だっただろう。それでも、こうしたものをお金として使うのは理想的とは言えない。なぜなら、種や香辛料はいつか腐ってしまうし、持ち運びに便利とは限らないからね。2キロの塩をお財布に入れていくわけにはいかないよね? そこで、人々は、ほかにお金として使えるような価値のあるものがないかと考え始めた。そこで登場したのが貴金属のお金だったというわけ。

 

■“金・銀の量”によって価値を裏付けられた「代表貨幣」

人類史上、金属が貨幣として使われるようになったのは、紀元前5000年ごろといわれている。小アジア(現在のトルコ領西部)のリディア王国で、初めて硬貨を造る文化が生まれたのが紀元前7世紀ごろだった。

 

やがて、ほかの国々や文明でも、価値が決められた独自の貨幣が造られるようになった。価値が決められた硬貨をお金として使うことで、簡単にものやサービスと交換できるようになったんだ。このタイプの貨幣は、「代表貨幣」と呼ばれていて、政府や銀行が、その硬貨の金や銀の量によってその価値を決めていた。

現代の貨幣制度

■“政府の信用”によって価値を裏付けられた「不換紙幣」

さて、時間を現代に早送りしよう。現代のほとんどの貨幣の価値は、金や銀に裏付けされたものではなくなった。私たちが現在使っているお金は、フィアットマネー(不換紙幣)というもの(フィアットとはラテン語で「~すべし」という意味なんだって)。政府が「このお金にはこれだけの価値がある」と公言した貨幣、つまり、政府の信用で流通するお金なんだ。アメリカでは、財務省というところでお金を造っているね。

 

紙幣は、アメリカ合衆国製版印刷局(BEP=Bureau of Engraving and Printing)で印刷され、硬貨はアメリカ造幣局(US Mint)というところで製造されるんだ。フィラデルフィアとデンバーの造幣局の施設では、硬貨の製造方法や造幣局の歴史を紹介するツアーに無料で参加できるんだよ。

 

じゃあ、日本の場合は、どこでお金を造っているか知っている? 紙幣は国立印刷局、硬貨は造幣局で造っているんだよ。発行も別々で、紙幣は日本銀行が発行しているけれど、硬貨は政府が発行して日本銀行に届けられるんだ。

 

■ちなみに、紙幣の「素材」や「製造工程」は…

きみは、アメリカドルって、どんなふうに造られているのだろうと思ったことはないかな?

 

アメリカでお金が初めて造られた1862年に比べると、その工程はかなり進化している。当時は、少人数の作業者が、財務省の建物の地下室で印刷機を手で回していたんだよ。現在では、紙幣を印刷するためには、訓練を受けた職人と特殊な機器、そして近代技術が必要なんだ。

 

お札は綿75%、麻25%の特別な配合の紙で造られ、その紙にはセキュリティ・スレッドという繊維とすかしが施されている。デザイナーが、緑、黒、メタリック、変色インクを組み合わせて、全体の外観やレイアウト、そして細かいところをデザインする。インタリオと呼ばれる特殊な印刷工程を経て、額面ごとにそれぞれの肖像画や装飾、数字、文字が加えられていく。

 

その後、通し番号、連邦準備銀行の印影、財務省の印影、連邦準備銀行の識別番号が追加される。そして、コンピューター、カメラ、高性能のソフトウェアが、お札を徹底的に審査、分析し、収縮包装をしてから、連邦準備銀行に届けられるんだ。

 

日本のお札は、みつまたやアバカ(マニラ麻)などを原料に、繰り返し使うことに適した丈夫な用紙から造られているよ。独自の配合で作ったインキで印刷して、偽造防止の技術などを施した後は、断裁機で正確に切り分けて、1枚ずつ検査をした後にフィルムで封入して日本銀行に納入される。

 

ちなみに、日本のお札の偽造防止技術は世界でもトップクラス! 光に透かすと見える「すかし」や「すき入れバーパターン」のほか、インキが盛り上がるように印刷された深凹版印刷、角度を変えると色や模様が変化するホログラム、紫外線を当てるとオレンジに光る特殊発光インキなど、10種類以上の偽造防止技術が使われているんだ。

 

 

ディリン・レドリング/アリソン・トム

 

カリフォルニア州オークランド在住の夫婦。イーベイなどのインターネット企業で働きながら資産形成に励み、2015年に40代前半にして早期リタイアを実現。2016年に「RetireBy45.com」というサイトを立ち上げ、FIREをめざす人たちにアドバイスや情報提供を行っている。著者らは『フォーブス』誌や、「ビジネスインサイダー」、「ヤフーファイナンス」などでも紹介されている。その他の共著に『Start Your F.I.R.E. (Financial Independence Retire Early): A Modern Guide to Early Retirement(FIREの始め方――早期リタイア入門)』(未邦訳)がある。

※本連載は、ディリン・レドリング氏/アリソン・トム氏の共著『父と母がわが子に贈るお金の話 人生でもっとも大切な貯める力、増やす力』(小野寺貴子訳、SBクリエイティブ)より一部を抜粋・再編集したものです。

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