(※写真はイメージです/PIXTA)

光熱費の高騰が家計を直撃…。特に電気代は、前年同時期と比べ約30%増加したなどともいわれています。電気代を筆頭に、製造コストを圧迫する現状では「値上げに踏み切らなくては下請け製造業に未来はない、また値上げをし、社員の給料UPも図らなければならない」、と700社を超える中小製造業の経営改善を支援してきた大場正樹氏は言います。本連載では、「値上げできない」は多くの中小製造業の思い込みであると語る大場氏が、「インフレ時代に生き残るための値上げ」について、交渉に勝つ価格設定や、実際の交渉テクニックなど具体的な戦略をわかりやすく解説します。

提示すべきは間違いなく高騰している「光熱費」データなど

どうやったら顧客が社内で決裁をとれるような交渉を成功させることができるでしょうか。大切なのは「値上げはやむなし」と思わせるようなデータをそろえて、なおかつそのデータを資料として担当者に提供し、決裁権者に説明するときにも同じように話してもらうことです。

 

合理的な値上げの根拠となり得るデータは、例えば以下のようなものです。

 

·「原材料である鋼材価格がこれだけ上がっています」と説明できるグラフ

 

·「光熱費がこれだけ上がっています」と電気料金の価格推移を示すグラフ

 

これらはいずれも、その気になれば簡単に入手できるデータです。なぜそれが良いのかといえば、「裏取り」が簡単にできるからです。また、いずれも自社で勝手に設定することはできず、市況の値段で調達するしかないものです。そのため、「外部環境に圧迫されて、仕方なく値上げしている」ということを、客観的に説明できます。

 

それでは、具体的なデータの調べ方を説明していきましょう。

 

 

まずは原材料費です。これは日本経済新聞に「主要相場」という紙面があり、タイトルのとおり主要な原材料の相場が列挙されています。値動きの激しい製品はデイリー(毎日)、比較的緩いものはウィークリー(毎週)、あまり急激に値動きしないものはマンスリー(毎月)で、平均的な取引価格が具体的な数字で公表されます。

 

デイリーで掲載されているのは石油、貴金属、非鉄地金、半導体スポット、鋼材、天然ゴム、繊維、砂糖、小豆・大豆などです。中小企業、特に製造業の皆さんにとっては、非鉄地金や鋼材の値動きの激しさは頭の痛いところではないでしょうか。

 

なお、実際に細かい価格設定を行う際には、歩留まりによるロスを必ず考慮するように注意してください。原材料は、必ずしも仕入れた分を100%使い切ることはできません。複雑な形状の金属加工を行う場合、最初に仕入れた板状の鋼材のうち、端材などはどうしても無駄になってしまいます。顧客からは、自分の手元に届いた製品の鋼材しか見えていません。しかし作り手側からするとコストはかかっているので、かかった分はしっかり顧客に請求することを忘れないようにしてください。

ここ最近の「電力費高騰」もどうしようもない理由

 

次に電力費ですが、これも非常にシンプルです。多くの小売電気事業者は、提供している電気の契約メニューにおける単価をホームページ上で公開しています。またここ数ヵ月の電気料金高騰は社会的に注目度の高いニュースになっており、値動きをまとめた日本経済新聞の記事などを容易にインターネットで調べることができます。

 

電力費の高騰は、誰にとっても頭の痛い問題です。しかし新型コロナウイルスが流行して経済活動が停滞してしまったことや、ロシアのウクライナ侵攻によって資源不足になったことなど、どうしようもない理由で起きていることです。それをデータで示すことにより、納得感のある値上げの根拠にできるでしょう。

※本連載は、2022年9月27日発売の書籍『インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術』から抜粋したものです。その後の制度改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術

インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術

大場 正樹

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊から30年、デフレが続いた日本を未曾有のインフレが襲う。 「値上げできない」という思い込みからの脱却が 原材料価格の高騰に苦しむ下請け製造業の活路を拓く。 これまで700社を超える中小製造業の経営改善…

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