(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●東証は新市場の上場を維持する経過措置について2025年3月以降に順次終了する案を公表。

●新市場で13.4%の企業は、上場維持基準に適合するための行動を数年内に起こす必要がある。

●経過措置終了や企業価値向上に関する本案は評価できる内容、今後も改革の進展が待たれる。

東証は新市場の上場を維持する経過措置について2025年3月以降に順次終了する案を公表

東京証券取引所(以下、東証)は2022年4月4日、「市場第一部」、「市場第二部」、「マザーズ」、「ジャスダック」の4市場を再編し、新たに「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場を発足させました。その際、上場維持基準を満たしていない企業でも、新市場にとどまることができる「経過措置」を設けましたが、東証は2023年1月25日、この措置を2025年3月以降に順次終了する案を明らかにしました。

 

これまで、経過措置の期間は「当分の間」とされていたため、明確な期限の設定を望む声も市場で多く聞かれ、今回の案はこれに応える格好となりました。同案によると、例えば経過措置が適用されている3月期決算企業の場合、2025年3月に経過措置が終了となり、その後1年の改善期間で上場維持基準に適合しなければ、原則として6ヵ月間、監理銘柄・整理銘柄に指定された上で、上場廃止となります(図表1)。

 

(注)2023年1月25日時点の内容。3月期決算企業の場合を想定。 (出所)東京証券取引所の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]経過措置の終了スケジュール (注)2023年1月25日時点の内容。3月期決算企業の場合を想定。
(出所)東京証券取引所の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

新市場で13.4%の企業は、上場維持基準に適合するための行動を数年内に起こす必要がある

2022年12月末時点における新市場の上場企業数は、プライム市場が1,838社、スタンダード市場が1,451社、グロース市場が516社となっています。東証の資料では、同時点において、新市場の上場維持基準に適合せず、経過措置を適用している企業数は、全体で510社にのぼり、内訳はプライム市場が269社(上場企業数比14.6%)、スタンダード市場が200社(同13.8%)、グロース市場が41社(同7.9%)となっています。

 

したがって、3市場全体で13.4%の企業は、上場維持基準に適合するための行動を数年内に起こす必要があります。なお、今回の案では、経過措置を適用してプライム市場に上場している企業については、昨年4月の新市場移行前、市場第一部に所属していた場合、審査なしで改めてスタンダード市場を選択する機会が設けられています。そのため、該当する企業の多くは、スタンダード市場に移行することが予想されます。

経過措置終了や企業価値向上に関する本案は評価できる内容、今後も改革の進展が待たれる

また、東証は今回、経過措置の終了時期を明確化したことに加え、中長期的な企業価値向上に向けた取り組みの動機付けとして、4つの項目を示しました(図表2)。1つ目の「資本コストや株価への意識改革・リテラシー向上」では、株価が1株あたり純資産の何倍に当たるかを示すPBR(株価純資産倍率)について、継続的に1倍を割れている企業に対し、改善策などの開示拡充を求める方針としました。

 

(注)2023年1月25日時点の内容。 (出所)東京証券取引所の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]企業価値向上に向けた取り組みの動機付け (注)2023年1月25日時点の内容。
(出所)東京証券取引所の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

経過措置の終了時期については、決定がやや遅れ、終了までの期間もかなり余裕を持ったものとなりましたが、市場の声を反映したことは評価できると思われます。また、図表2の4項目は、いずれも企業価値向上につながると考えられるため、強く推進することが望まれます。新市場は、段階的な改善が行われている最中ですが、プライム市場の上場企業数の絞り込みなど、更なる改革の進展が待たれます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『東証の市場再編 ~上場維持の経過措置は順次終了へ【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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