11月分機械受注(除船電民需)は前月比▲8.3%と、2ヵ月ぶりに減少に転じる
製造業・前月比▲9.3%と3ヵ月連続減少、非製造業は前月比▲3.0%と3ヵ月ぶりの減少
3ヵ月移動平均▲2.6%と3ヵ月連続減少。「持ち直し」外れ「足踏みがみられる」に下方修正
10~12月期見通し前期比+3.6%には12月前月比+30.0%必要。前月比0.0%なら▲5.5%
●11月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲8.3%と、2ヵ月ぶりの減少になった。減少率が大幅だったので、3ヵ月移動平均は前月比▲2.6%と、10月分の前月比▲1.9%からマイナス幅が拡大し3ヵ月連続減少になった。また、機械受注(除船電民需)の前年同月比は▲3.7%で20ヵ月ぶりの減少になった。
●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回10月分では、製造業の非鉄金属で1件(原子力原動機1件)だった。今回12月分では、非製造業の運輸業・郵便業で1件(鉄道車両)、金融業・保険業で1件(電子計算機等)の計2件だった。
●11月分製造業の前月比は▲9.3%と3ヵ月連続の減少になった。11月分の製造業では17業種中、化学工業、鉄鋼業など8業種で増加した。一方非鉄金属、電気機械など9業種が減少した。
●11月分非製造業(除船電民需)の前月比は▲3.0%と3ヵ月ぶりの減少になった。電力業の大型案件は10月分に引き続き3ヵ月連続で該当なしだった。電力業の前月比は+36.7%と3ヵ月ぶりの増加となった。11月分の船舶・電力を含む非製造業全体では前月比+8.5%と2ヵ月連続増加した。非製造業12業種中、電力業、運輸業・郵便業などの8業種が増加で、情報サービス業、リース業などの4業種が減少となった。
●大型案件は、10月分では、全体で2件だった。前述の1件(非鉄金属)の他は、官公需で1件(地方公務で電子計算機等)だった。今回11月分では、全体で4件だった。前述の2件(運輸業・郵便業、金融業・保険業)の他は、外需で2件(火水力原動機2件)だった。
●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は11月分前月比+1.2%と2ヵ月ぶりの増加となった。前年同月比は▲5.5%と2ヵ月連続の減少になった。
●外需は、11月分の前月比が▲4.0%と3ヵ月ぶりの減少になった。前年同月比は▲4.4%で2ヵ月連続の減少になった。
●内閣府の基調判断の推移をみると、22年4月分では、「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」へと4ヵ月ぶりに上方修正された。5月分・6月分・7月分・8月分と、「持ち直しの動きがみられる」の判断が継続したが、9月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が下方修正された。前回10月分では前月比は増加に転じたものの、3ヵ月移動平均の前月比が引き続き減少したことなどから、判断据え置きになったようだ。今回11月分では、持ち直しの動きが外れ、「足踏みがみられる」に判断がさらに下方修正された。11月は製造業・非製造業とも前月比減少となったこと、3ヵ月移動平均の前月比が3ヵ月連続減少したことなどが要因だ。
●機械受注(除船電民需)10~12月期の前期比見通しは+3.6%である。10~12月期の前期比実績は09年(平成21年)から21年までの13年間でみると、上振れ9回、下振れ4回であり、上振れしやすい傾向がある四半期と言える。ただ、22年(令和4年)10~12月期の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率100.3%をかけたものであり、見通しの算出に使った達成率が100%より高い。DX投資などの今やるべき投資がある局面であるが、先行き不透明な環境は設備投資に厳しいものがあり、今年の10~12月期実績は下振れる可能性が大きくなったと思われる。
●機械受注(除船電民需)10~12月期の前期比見通しは+3.6%を達成するには、12月分の前月比が+30.0%と大幅増加する必要がある。12月分が0.0%と横這いなら、10~12月期の前期比は▲5.5の減少になる。12月分が+18.0%の増加なら、10~12月期の前期比は▲0.0%の微減になる。
●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・現状判断DIは、22年3月43.8(同8人)、4月37.5(同4人)、5月37.5(同6人)、6月28.6(同7人)、7月42.9(同7人)、8月46.9(同8人)、9月43.8(同4人)、10月51.1(同7人)、11月35.0(同5人)、12月45.8(同6人)と推移している。12月では「客先の設備投資の話題が少なく、3ヵ月前と比べても見積りの件数が少ない。(東北:一般機械器具製造業〔経営者〕)」というコメントがあった。
●一方、設備投資関連・先行き判断DIは22年3月37.5(同6人)、4月25.0(同2人)、5月43.8(同8人)、6月50.0(同6人)、7月50.0(同3人)、8月60.7(同7人)、9月55.6(同9人)、10月31.8(同11人)、11月25.0(同4人)、12月65.0(同10人)と推移している。12月では「新型コロナウイルス感染症が徐々に終息し、経済活動が活発化する。ものづくり補助金、事業再構築補助金が設備投資につながり始める。(中国:会計事務所〔経営者〕)」という設備投資増加を示唆するコメントがある一方、「日本銀行による長期金利の変動許容幅の拡大が企業の設備投資等経済活動の抑制につながる可能性があり、企業の収益回復のスピードは鈍化する。(中国:金融業〔貸付担当〕)」という新たに出てきたマイナス材料に関するコメントがあった。
●日本工作機械工業会によると、22年12月分速報値の工作機械の国内向け受注額の前年同月比は▲17.3%と、21年3月分+18.2%、4月分+70.6%、5月分+82.6%、6月分+91.1%、7月分+82.9%、8月分+93.2%、9月分+90.2%、10月分+74.1%、11月分+84.9%、12月分+60.8%、22年1月分+67.3%、2月分+60.4%、3月分+48.8%、4月分+47.5%、5月分+48.9%、6月分+31.3%、7月分+14.5%、8月分+16.2%のあと、19ヵ月ぶりの減少になった9月分▲8.9%、10月分▲11.4%、11月分▲8.7%に続き4ヵ月連続の減少になった。
●機械受注統計での民需からの工作機械受注も11月分も前年同月比で減少となった。22年11月分の前年同月比▲3.0%とマイナス幅は前月から縮小したものの3ヵ月連続の減少だ。21年3月分+17.0%、4月分+71.4%、5月分+85.6%、6月分+77.2%、7月分+84.8%、8月分+91.4%、9月分+80.1%、10月分+63.5%、11月分+90.7%、12月分前年同月比+67.8%、22年1月分前年同月比+59.4%、2月分+55.6%、3月+44.4%、4月+39.4%、5月分+46.5%、6月分+21.8%、7月分+10.4%、8月分+9.7%の18ヵ月連続増加の後、9月分▲2.2%と19ヵ月ぶりに減少に転じ、10月分も▲14.0%の減少だった。日本工作機械工業会のデータから見て、12月分では前年同月比の減少率の拡大が見込まれる。
(2023年1月18日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年11月分「機械受注」のデータ』を参照)。
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト