(※画像はイメージです/PIXTA)

相続税対策の一つとされ、2023年3月いっぱいで期限を迎える「教育資金贈与」が、政府の「2023年度税制改正大綱」において、変更を加えたうえで期限が2年延長されることとなりました。本記事では、教育資金贈与の制度と利用メリットについて、税制改正大綱における修正点も踏まえつつ解説します。

教育資金贈与の固有の活用メリット

教育資金贈与に固有の活用メリットがあるのはどういう場合でしょうか。

 

すなわち、教育資金を親が子に贈与することは、扶養義務を履行する行為であり、そもそも贈与税がかかりません。したがって、教育資金贈与固有のメリットが問題となるのです。

 

従来いわれてきたのが、子・孫等に自身が亡くなった後の分まで贈与できるという点でした。なぜなら、直系尊属の扶養義務があるのは、その者が生存している間のみに限られるからです。

 

言い換えると、教育資金贈与の特例を利用すれば、贈与者の死後の分まで生前に贈与でき、そこに相続税がかからないということです。

 

しかも、教育資金贈与の特例は、「暦年贈与制度(贈与税の暦年課税における年110万円の基礎控除)」、「相続時精算課税制度」と併用できます。

 

しかし、2023年度税制改正大綱によれば、2023年4月以降はこの活用メリットに一定の制限が加えられることになりました。

2023年度税制改正大綱で「使いきれなかった残額」の贈与税課税が強化

教育資金贈与の特例の制度は、相続税の節税効果があるとされてきました。しかし、2023年度税制改正大綱において修正が行われ、相続税の節税効果は部分的に失われることとなりました。

 

修正点は以下の通りです。いずれも、教育資金贈与を行った額のうち「使い切れなかった額」に関する課税強化に関するものです。

 

1. 途中で贈与者(祖父母等)が死亡した場合、その贈与者の相続税の課税価格の合計が5億円を超えるときは、教育資金贈与された額のうち未使用の額について受贈者(孫等)に相続税が課税される

 

2. 贈与者が生存し続けた場合、受贈者が30歳に達した際に、未使用の額について贈与税が課税される

 

それぞれについて解説します。

 

◆修正点1|富裕層の一部にとって相続税の節税メリットがなくなる

従来は、贈与者(祖父母等)の死亡時に受贈者(孫等)が23歳未満の場合や学校等に在学している場合等は、使い切れなかった額について相続税が非課税となっていました。

 

しかし、2023年4月以降については、贈与者(祖父母等)の死亡時の資産(相続財産)の相続税の課税価格が合計5億円を超える場合、教育資金贈与の額のうち使い切れなかった残額について、相続税の課税対象となることになりました。

 

なお、受贈者が贈与者の相続人でない場合、すなわち、「親から子」の贈与でない場合、「2割加算」の対象となります。

 

これは、富裕層の一部に属する人にとっての教育資金贈与の特例のメリットを失わせるものであり、実質的な「資産制限」を設けるものといえます。

 

◆修正点2|贈与税の課税強化

贈与者(祖父母等)が、受贈者(孫等)が30歳になるまで生存し続けた場合、使い切れなかった残額には贈与税がかかります。その際、従来は直系尊属からの贈与について税率が軽減される「特例税率」が適用されていました。

 

しかし、2023年4月以降については、「特例税率」を適用せず、「一般税率」を用いて贈与税が計算されることになります。

 

ごく大ざっぱな表現をすれば、「教育資金贈与した額について、所定の目的に全額を使い切らなかったら、ペナルティとして、これまでより贈与税を重くするぞ」ということです。

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