(※写真はイメージです/PIXTA)

現状を不満に思う人は、それを変えるために声を上げます。一方、満足している人は、わざわざ声を上げることはありません。企業の商品開発の現場でも、政治でも「現状への不満」を聞き取る重要性が説かれる一方、現状に満足している「ものいわぬ層」がどれほどいるのかという点に思いをはせることが重要です。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

現状に満足している人は声を上げない

あなたは会社員で、オフィスの自席のそばにエアコンのスイッチがあるとします。あるとき、あなたのところへひとりの従業員から「部屋が寒いから、暖房を強くしてほしいのですが…」という申し出がありました。どうしますか?

 

きっと「わかりました」と答えて暖房を強くする人が多いのではないでしょうか。しかし、それによって、黙っていた人たちが一斉に「暑い、暖房を元に戻して!」といいはじめるかもしれません。

 

部屋が寒いと感じている人は声をあげますが、部屋が適温だと感じて満足している人は、わざわざ「いまの室温は快適なので、空調を維持してほしい」とはいいませんから。

寄せられた声をもとに判断を下すのは、簡単ではなく…

部屋の温度であれば、スイッチを動かす前に「皆さんも寒いですか?」と聞くことが可能ですが、それができない場合には、むずかしい判断を迫られることになりかねません。

 

たとえば政府の政策に対して反対運動が起きている場合、国民の過半数がデモに参加することは考えにくいですから、もしかしてデモに参加していない多数の人々は政府の政策に賛成かもしれません。賛成している人は、わざわざデモをして「政府は政策を推進しろ」などとはいいません。

 

そこで、マスコミ等が世論調査をおこなって、政府の政策に対する国民の支持率を調べることが重要になるわけですね。

 

余談ですが、世論調査の結果を見る際には、どのように調査がなされたのか知っておくと、誤った理解を避けられるかもしれません。たとえば、反政府寄りの報道姿勢が目立つ新聞社が読者アンケートを実施しても、国民の平均的な意見が聞けるとは思われません。

 

そうした影響を避けるため、固定電話に無作為に電話するという工夫も考えられますが、その場合には、高齢者や専業主婦の意見がおもに反映されてビジネスパーソンの意見が反映されにくい、ということも起きそうです。

 

昔、経済に詳しくない政治家が失敗したことがありました。選挙区の高齢者たちから「金利が低すぎて、我々金利生活者が困っている」と陳情されたので、早速記者会見を開いて「金利を上げなければ」と発言したのです。

 

そもそも金利を決めるのは日銀であって政治家ではないので、それだけで経済に詳しくない政治家だとわかるのですが、本稿の関心事項は別のところにあります。

 

記者会見を聞いて激怒した選挙区の中小企業が、怒鳴り込んで来たそうです。「私たちは金利が低いからなんとか生きている。金利が上がったら倒産だ!」というわけですね。

円高でも円安でも「日本経済の危機」との報道が

円高になると、輸出企業の悲鳴が聞こえてきます。「社員はボーナスを諦めてくれ」「下請け企業には値下げをお願いしたい」「政府には支援をお願いしたい」…というわけですね。マスコミも、倒産した企業等の取材に行きます。

 

一方で、円高になれば輸入企業は儲かっているはずですが、儲かっている会社は黙っています。「儲かった」などといえば、労働組合の賃上げ要求や下請け企業の値上げ要請が怖いですし、税務署もやってくるでしょうから(笑)。

 

したがって、マスコミ報道だけを見ていると、「円高で日本経済は困っている」と感じるわけですね。

 

円安になると、反対に輸入企業の悲鳴が聞こえる一方で、輸出企業は黙っていますから、やはり「円安で日本経済が困っている」と感じるわけです。

 

実際には、日本の貿易収支は概ねゼロですから、円高でドルが安くしか売れない企業とドルを安く買える企業が概ね同じだけ存在しているわけで、円高でも円安でも日本経済への影響はそれほど大きくないはずなのですが。

 

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