お金に困る人・お金が貯まる人…「すでに使ったお金と時間」への考え方に大きな差 (※写真はイメージです/PIXTA)

「お金や時間をかけたのだから、手放すのはもったいない」。この思考パターンに陥る人は少なくありません。しかし、かけた費用や時間への固執は、さらなる無駄なコストの発生となることがあります。その点に気づける人、気づけない人との間には、大きな違いが生まれるのです。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

赤字続きの国立競技場、儲かる施設に建て直しては…?

五輪のメイン会場だった国立競技場――。

 

五輪終了後の利用率は低く赤字続きで、今後も赤字が続く見込みの模様です。せっかく民営化されても、結局は公費での費用負担が続くことになります。

 

それなら、五輪会場は解体すべきだと、筆者は考えます。都心の一等地ですから、取り壊して儲かる施設を作れば有益なものとなるでしょう。

 

とはいえ、本稿は五輪開催や競技場建設を批判する意図はありません。五輪は日本にとって素晴らしいイベントで、立派な施設を作るという意思決定も妥当だったということだと考えます。新型コロナによって無観客となったため、結果的には観客席は無駄になってしまいましたが、それはあくまでも事故であり、施設建設の意思決定を批判する材料とはなり得ません。強いていうなら、五輪終了後の利用率が上がるように使い勝手のよい施設を作ってほしかったとは思いますが、その点についても本稿では論じないこととしましょう。

すでに支払った費用・取り返せない費用に固執する愚

巨額の費用をかけて作った施設について「解体するのはもったいない」と考える人も多いかもしれません。しかし、巨額の費用はすでに「払ってしまった」のです。今後、施設を使い続けたとしても、その費用が戻ってくることはありません。それなら、払ってしまった費用のことは忘れて「今後は何をすればいいのか」ということだけを考えるべきなのです。

 

このように、払ってしまった費用のことを「サンクコスト」と呼びます。サンクというのは、サンキューの一部ではなく、「沈んでしまった」という意味の単語です。これはさまざまな所で登場します。

 

期待して買った本を読み始めたら、ものすごくつまらなかったとき。本を買った費用を「もったいない」と考えて最後まで読む人は多いでしょうが、結果として、本を買った費用と「つまらない…」と思いつつ読んだ時間の両方を損することになるわけです。

 

それなら購入費用のことは忘れて、「いまから自分が幸せになるには、引き続きこの本を読むべきか、それとも散歩に行くべきか」と考えるべきなのです。

 

買った代金がもったいないと思うだけでなく、「こんな本を買った自分は愚かだった」と思いたくないばかりに、「最後まで読めば面白いかもしれない」という小さな可能性に賭けてみる、ということもあるでしょう。しかし、多くの場合は「つまらない本を買ったばかりでなく、最後まで読んだ自分は愚かだった」と、一層の反省をすることになるはずです。自分に見栄を張るのではなく、素直に読むのをやめればいいのです。

 

もっとも、組織の場合には「本を読まずに捨てましょう」というと、その本を買うという意思決定をした偉い人を批判することになりかねないので、賢く立ち回る必要があるかもしれません。

 

そうの点を考える必要がないように、本稿では「五輪会場の建設という意思決定自体は問題なかったので、取り壊そうと主張しても建設を決めた人を批判することにはならない」という立場に立っているわけです。

「収益ゼロ」より「少額の黒字」のほうが悩ましい

サンクコストは「実際に払った金だけれども考慮しない」というものでしたが、反対に「実際には動いていない金だが考慮すべき」というものもあります。〈機会費用〉と呼ばれるものです。

 

昼寝にはコストがかかりませんが、昼寝をせずにアルバイトをすれば稼げたはずなので、「それを犠牲にしても昼寝をするか」という意思決定をする必要がある、ということですね。

 

その意味でも、都心の一等地にある国立競技場は、取り壊して儲かる施設を建てるべきなのです。「別の施設を建てれば大いに儲かるのに、国立競技場を維持するのはもったいない」というわけですね。

 

国立競技場の場合には、維持費が賄えずに赤字ですから、「取り壊す」という選択肢を思いつく人も多いでしょうが、むしろ問題は少額の黒字を稼いでいる場合かもしれません。

 

社内のエリートを集めて新事業を立ち上げたのに利益が少額だった場合は、「もっと頑張れ!」と叱咤激励するより、「解散!」と宣言してエリートたちを従来の仕事に戻し、稼がせることも要検討でしょう。

 

あるいは、パパママストア(夫婦で経営する零細の小売店)が少額の利益しか稼いでいないなら、店を閉じて2人で働きに出るべきかもしれません。育児や介護をしながら家で働く必要がある、といった事情があるならば別ですが。

 

サークルの活動費用を稼ぐため、学園祭で焼き鳥を売るという学生がいますが、機会費用を考えるとおすすめできません。学園祭で焼き鳥を売って少額の利益を稼ぐより、学園祭の期間中に焼き鳥屋でアルバイトをするほうが、はるかに稼げるでしょうから。

 

もっとも、金を稼ぐという以外にも「サークルの仲間でワイワイ言いながら焼き鳥を売ってみる」ということ自体に楽しみを感じるのであれば、筆者が口を出す話ではありませんが(笑)。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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    経済評論家

    1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。2022年4月に定年退職し、現在は経済評論家。

    著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』『大学の常識は、世間の非常識』(以上、祥伝社)など多数。

    趣味はFacebookとブログ。

    著者紹介

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