常に健全な経営でなければ「後継者難」に
事業承継の高いハードルの1つに、「後継者が個人保障を引き継ぐ」という点があります。
先述したように、社長が交代した場合には個人保証人を後継者に交代するように銀行から求められますが、これが親族外承継においては非常に高いハードルとなっています。
後継者にしてみれば「会社の借金を連帯保証する」ということになりますので、事業に失敗すれば経営者(後継者)個人の財産が差し押さえられてしまう可能性があるわけです。
したがって、常に健全な経営を心がけていかなければ親族以外はリスクが高く後継者を引き受けてくれません。
また、先代個人が会社に貸し付けている土地や建物はすべて会社で買い取るようにしましょう。そうしなければ、もしも社長が亡くなった場合に「遺留分」の問題が生じ、会社と親族のあいだでトラブルに発展しやすくなります。
まとめ:事業承継はとにかく「いますぐ始める」ことが重要
このように、事業承継というのは一筋縄ではいきません。「明日からよろしくね」と言って社長の代わりができるほど、会社経営というのは簡単ではないのです。
「あと5年で辞める」といったビジョンがあるのであれば、いますぐに事業承継に向けて動いていく必要があります。
会社というのはやはり未来永劫続いてほしいと思うのが経営者ですし、残された社員が破産してしまうような未来を望む経営者は誰もいないでしょう。しかし、事業承継対策を講じていなければ、会社解散のリスクや後継者になった社員が破産してしまう結果を招きかねません。
したがって、事業承継というのは「とにかくいますぐ始める」ということが重要です。
日本の会社のうち「99.7%」は中小企業といわれ、2020年の1月~12月、後継者難による倒産は370件に及びます。これは2013年の調査開始以来最多※で、年々後継者不足による廃業が増加しています。
※ 株式会社東京商工リサーチによる調査
本来であれば事業承継に取りかからなければいけない年齢にもかかわらず、結局後継者が見つからないまま月日が経ち、廃業に至るケースが日本全国で溢れています。
このようなケースは今後も増えていくことが確実視されていますので、残された社員や家族のために、いまからしっかりと対策を講じておくことが重要です。
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加陽 麻里布
永田町司法書士事務所
代表司法書士