※画像はイメージです/PIXTA

2022年末に発表された令和5年度税制改正大綱により、相続税が改正される方向性であることが発表されました。いままでは相続発生前3年間に贈与をしたものは、その贈与を遡及して相続財産に含むものとして相続税を計算していましたが、相続発生前7年間に変更されます。これによる注意点や対処法を公認会計士・税理士・不動産鑑定士の冨田建氏が解説します。

いままでと改正後…なにが変わるのか?

毎年、税制の方向性を定める税制大綱が年末に発表される。その結果、令和5年度税制改正大綱では、単純にいうと「3年以内贈与財産の加算と税額控除」の「3年以内」が「7年以内」と、より長期間となるとされた。

 

ただし、これを単に適用すると古いものまで贈与の記録等を残さなければならないため、細かい贈与の場合、事務の負担が大きすぎる。この点に配慮したと思われるが、7年のうち古いほうの4年分は100万円までは相続財産の課税価格の計算から控除できるとされた。なお、この規定は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用となる。

 

従って、令和5年のいまの時点において、「4~7年前の贈与の記録なんて残っていない!」と焦る必要はないと思われる。

 

延長に伴い、なにに注意すべきか?

先の「3年以内贈与財産の加算と税額控除」の説明では、比較的少額かつシンプルな例としたが、実際には令和6年以降になされる高額の贈与については、相続財産に「含め直される範囲」が拡大される結果、かなりの税負担の変動が生じかねない。よって、贈与を用いて相続税の節税を試みているものの、それでも高額の相続税が予想される場合は、速やかに税金のシュミレーションを引き直し、贈与計画等も見直すべき点が、最大の注意点といえるであろう。

 

また、従前は3年以内の贈与だけ記録を残しておけばよかったが、令和6年以降は4~7年前となった贈与の記録も十分に残しておくことも注意点だ。万が一、税務署が調査にきた場合に説明できるようにしておくためだ。

 

さらに、細かい点でいうと、その適用が令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税であるため、令和5年の贈与は無関係と考えられる。よって、贈与で節税を試みるもそれでも高額な相続税が発生しかねない場合は、令和5年の贈与という猶予期間を上手に活用すべきことも注意点といえるであろう。

【まとめ】贈与に関する意思決定の際の3つの注意点

「3年以内贈与財産の加算と税額控除」の「3年」が「7年」になるが、古いほうの4年分については100万円までは相続財産の課税価格の計算から控除できるとされるとの点が今回の税制大綱で示された指針である。そして、以下の点に十分に注意して贈与に関する意思決定をすべきであろう点が指摘される。

 

1.高額の相続税が予想され贈与で節税を試みている場合は速やかに税務のシュミレーションを引き直すべき点

 

2.令和6年以降は7年分、贈与の記録を残しておくべき点

 

3.贈与で節税を試みている場合は、令和5年という「適用猶予期間」の贈与を上手に使うべき点

 

なお、相続税を課される方は、亡くなった方の概ね8%程度である。そもそも相続税が課されない方が大半であり、そのような方にとってはこの改正は無関係である。このような方が過剰に増税だなんだと騒ぎ立てたり、不安から余計な行為をしないよう留意すべき点も、追記したいと思う。

 

※以下は令和5年度税制改正大綱の写し

 

(2)相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等について、次の見直しを行う。①相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。

 

(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。

 

 

冨田 建

冨田会計・不動産鑑定株式会社/冨田建不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所

代表

 

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