(※写真はイメージです/PIXTA)

日本では、給与所得等の最高税率は45%で、高額所得者は地方税を加えると所得の半分以上が税金になるケースも。一方の土地や株式の売却益ですが、税金は地方税を併せても所得の20%強…。この不公平を是正するため、国は年間の所得が30億円を超える超富裕層への課税を検討しています。しかし、目論見通りに運ぶとは思えません。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

政府は「所得30億円超の所得税」増税の方針

政府は、所得が年30億円を超える超富裕層の所得税に最低負担率を導入する(増税する)方針のようです。

 

給与等に対する所得税は累進課税となっているのに、株や土地の売却益等は源泉分離課税を選択することができるので、数千万円の給与を稼いだ人のほうが何億円も売却益を稼いだ人よりも所得税率が高いということが問題となったことが始まりでした。

 

給与所得等の最高税率は45%ですから、巨額の所得がある人は地方税を加えると所得の半分以上が税金なのに、売却益が何億円もある人は地方税を併せても税金は所得の20%強なのです。そこで、所得が1億円を超えると税負担が下がると言われているわけです。1億円以上稼ぐ人は、給与所得者等よりも売却益長者のほうが多いでしょうから。これが「1億円の壁」と呼ばれる問題です。

 

そうであれば、高額の売却益を稼いだ人には高率の所得税率を課すべきだ、という議論がおこなわれていた結果、今回の決定に至ったわけです。

 

もっとも、対象人数は数百人のようですし、増税幅についても所得50億円のケースで2%か3%の負担増といった小幅なものになるようです。それなら税収の増加はほとんど期待できないでしょうし、税率の逆転を解消するにはほど遠いでしょう。

 

一方で、税法を改正する手間、年収30億円を超えた人を探し出す手間、等々を考えれば、コスト割れする可能性も十分ありそうです。これでは、「問題を放置していたわけではない」という言い訳をするために無駄な努力をしたということにもなりかねません。

 

次ページ本来は、売却益も給与等と合算して累進課税すべき

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