Aさんが自宅を「単独取得」することは可能か?
本件のように相続人が多数いたうえに疎遠な場合、1人ひとりに手紙をしたためて、Aさんが自宅を単独取得する旨の「同意書(遺産分割協議書)」に応じていただけるかの意向を確認する必要があります。
しかし、全員の同意を得ることが明らかに難しい場合には、家庭裁判所に「遺産分割調停申立て」を先行することもあります。
今回は、Aさんの相続分割合が少ないことも踏まえ、「遺産分割調停申立て」を先行させることとしました。
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停を申し立てると、家庭裁判所から他の相続人に対して、「調停の申立書の写し」と「期日の呼出状」が郵送されます。
裁判所から呼出状が届いた相続人は、全員が調停に出席してくるケースもありますが、遠方に住んでいたり、体の調子がよろしくない、といった事情で欠席する人がいるケースもあります。この場合、欠席した相続人に対しては、申立人や裁判所から手紙などで遺産分割に対する希望を確認することになります。
本件では、半分程度の方が出席してきました。そのうち、年長の相続人がリーダー格のような立ち位置となり、他の相続人は、リーダー格に委ねるような関係ができあがっていました。
「Aさんが6割取得、残り4割は代償金」で合意に至るも…
筆者は、Aさん夫婦が家業を受け継ぎ、義父の介護をし、本家の墓を守ってきたことなどから、本当は義父が亡くなった際に夫が相続することがふさわしかったことを訴え、なんとかAさんが単独取得することを認めてもらえないか打診しました。
すると、Aさんの熱意が通じたのか、他の相続人からは、一定の理解を示してもらえました。ただし、「Aさんが一切の負担をせずに相続分をすべて取得させることには反対である」ということも告げられました。
話し合いは硬直してしまいましたが、調停委員から、Aさんの寄与的な行為や現在の置かれた状況などを考慮してもらい、「本来の相続分が2割のところを6割までAさんが取得し、残り4割については、他の相続人に代償金を支払って、買い取る」という調停案が出され、合意に至りました。
これで一件落着、と誰もが胸をなでおろしたのですが、結果としてはうまくいきませんでした。
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