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長男の言動に違和感が…次男に募る「不信感」
事案の概要
ある地方に、両親と長男・次男の4人家族がいました。次男は進学を機に地元を離れ、遠方で就職・結婚をして暮らしていました。長男も結婚して実家を出ましたが、実家の隣の市町村で暮らしていました。
そのうち、父親の認知症が進み、母親が献身的に介護してきました。しかし、今度は、母親が体調を崩して、入院することになりました。1人では生活できない父親は、やむなく、施設に入所することになり、実家は空き家となりました。
両親の通帳は長男が預かり、入院費用の支払などの管理をすることになりました。次男も、時間を見つけては、地元に帰り、両親と面会していました。
入院から1年ほどして、母親が亡くなりました。四十九日法要の際、次男が長男に、「母親の通帳のことだけど」と尋ねると、長男は突然不機嫌になり、「こんなところで何だ。後で話す」と言って、取り合ってもらえませんでした。
数日後、長男から、「支出の一覧表」がメールで送られてきました。そこには、母親の入院代や葬儀代、父親の施設代などの他に、長男本人や長男の妻子に対する多額の「贈与」が記されていたのです。
しかし、次男は、入院中の母親や長男から、贈与についてこれまで一切聞いたことはなく、また、通帳も見せずに支出の一覧だけ送ってくる長男の行動に違和感を覚えました。
真意を確認しようと長男に電話しましたが、一切出てもらえなかったことから、次男は、弁護士に依頼するしかないと考えるに至ったのでした。
ご依頼を受けて、当事務所(弁護士)は、母親の銀行口座の履歴を取得しました。すると、亡くなる前の引出しに加え、亡くなった後にも、多額の引き出しがあったことが判明。弁護士は、長男に対して、引き出した金銭について説明を求める質問状を出しましたが、返答は何もありませんでした。
そのため、やむなく、母親の預金口座から引き出された金銭のうち次男の相続分の返還を求めて、裁判を起こすこととなりました。
裁判では、長男は、「引き出した金銭は次男に渡した」とか「死後の引き出しは次男がやったことだ」などと主張してきましたが、弁護士は、長男自身から送られてきた「支出の一覧表」と長男の主張が矛盾していることや、銀行から取り寄せた出金請求書の筆跡が長男と酷似していること、また、預金が引き出された銀行の支店が長男の自宅付近であった調査結果を提出し、長男の主張が虚偽である点を徹底的に反論しました。
その結果、次男の勝訴判決となり、長男に対する支払が命じられました。