(写真はイメージです/PIXTA)

円安が急速に進んだ2022年。この影響により、2023年は「日本経済大復活」のチャンスだと、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。「大復活」のチャンスをつかむため日本経済に必要なこと、そして「いまだかつてないほど割安な水準」にある国内株式が、近い将来大きく上昇する可能性についてみていきましょう。

労働はコストではなく価値の源泉

Q:多くの企業経営者からは、今更国内生産体制の構築は困難である。人が集まらない、技術者がいない、との嘆きが聞こえる。

 

武者:一旦失われた生産体制の再構築は困難だが、それをやりきることが勝敗を分かつ。そのためには労働政策を根底から見直さなければならない。

 

円高デフレ下での企業の労働政策は、コストの抑制にあった。円が2倍になったことで、日本人労働者の賃金を半分に引き下げないと競争できなくなり、賞与・残業代カット、工場の海外移転を推し進めた。

 

出所:内閣府、武者リサーチ
[図表5]物的生産性・付加価値生産性と賃金推移 出所:内閣府、武者リサーチ

 

図表5は企業における1人当たりの物的生産性、付加価値生産性、労働報酬の推移であるが、日本企業は世界的技術発展の恩恵を受け、物的生産性をそれなりに上昇させてきた。にもかかわらず、円高とデフレによる販売価格低下により、企業には生産性上昇の果実が残らず、付加価値生産性は横ばいであった。

 

出所:OECD、武者リサーチ
[図表6]実質賃金推移の国際比較 出所:OECD、武者リサーチ

 

しかし労働報酬をそれ以上に抑制し、それによって企業利益が確保された、という連鎖が起きた。日本の実質賃金が過去30年間まったく上昇せず、デフレに陥ったが(図表6)、その起点は、円高下での企業の価格競争力維持の努力にあったといえる。

 

しかしこれからは労働が価値の源泉であるという認識の転換が必要である。高い賃金を払ってでもいい人を採用し、モチベーションを高めて競争力のあるチームを作らなければならない。労働はコストという認識から労働は価値の源泉という認識へと、発想の大転換が必要である。

保守的な財務戦略から「自社株買い」への転換が必要

Q:企業の財務資本政策も大転換が必要だ、その柱が自社株買いによる高株価経営だとも主張している。

 

武者:バブル崩壊以降、日本企業は保守的財務戦略に徹してきた。借金を減らし、利益の社外流出を抑えて自己資本を厚くし、ひとたび危機が起きたときに備えるため財務クッションを著しく高めてきた。

 

出所:Wall Street Journal、元データ:Factset
[図表7]日米欧上場企業の負債資本倍率(D/Eレシオ) 出所:Wall Street Journal、元データ:Factset

 

図表7は日米欧の上場企業のDebt to Equity レシオであるが、日本企業の極端な保守性が際立つ。このデレバレッジの財務戦略は、資本効率を無視し安全性のみにこだわったバランスを欠いたものになっている。

 

いまや低レバレッジ経営は株価低迷をもたらし買収されやすくなる一方、他企業の買収や新規分野への投資などの将来に対する布石を縛ることで、負けパターンの企業戦略といえる。

 

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次ページ2023年の日本経済における「最大のリスク」とは

※本記事は、武者リサーチが2022年11月21日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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