(※画像はイメージです/PIXTA)

「新しい」ものを作らなければならない、しかし、何をどうやって作るべきかわからない人はとても多いのではないでしょうか。詩人のオースティン・クレオン氏は、新しい物を生み出すには、まず「盗む」ことが重要だと言います。本記事では、アーティストとして「盗む」方法と、そのメリット、「盗む」ことに対する姿勢などを、オースティン・クレオン氏が解説します。

知っていること好きなことを書く

映画『ジュラシック・パーク』が公開されたのは、僕の10歳の誕生日だった。熱狂した。映画館を出た瞬間から、続きが見たくてたまらなくなった。次の日、僕は古いパソコンの前に座って、続編を書きはじめた。シナリオはこうだ。

 

ヴェロキラプトルに食べられた恐竜監視員の息子が、パークを建設した男の孫娘とともに、島に戻る。1人は残ったパークを破壊しようとするが、もう1人は存続させようとする。もちろん、2人は恋に落ち、さまざまな冒険を繰り広げるってわけだ。

 

当時は知らなかったが、僕が書いていたのは「ファン・フィクション」って呼ばれるものだ。つまり、既存の登場人物をもとに作ったフィクションだ。

 

10歳の僕は、シナリオをハードディスクに保存した。数年後、待ちに待った『ジュラシック・パーク2』が公開された。最悪だった。続編ってのは、たいていみんなの期待を裏切る。

フィクションはすべてが“ファン・フィクション”(2次創作)

若い作家はあるとき必ずこんな疑問を持つ。自分は何を書けばいいのか? 「知っていることを書け」ってのがよくある答えだ。このアドバイスに従うと、たいていは面白いことが1つも起こらない、ひどいストーリーができあがる。

 

僕たちがアートを作るのは、アートが好きだからだ。僕たちがある作品に惹かれるのは、その作者に刺激を受けるからだ。突きつめていえば、フィクションはどれも“ファン・フィクション”なんだ。

 

だから、いちばん大事なのは、知っていることじゃなくて、好きなことを書くことだ。自分のいちばん好きなストーリー、自分の読みたいストーリーを書こう。人生や仕事も同じ。筋書きに迷ったときは、こう自問すればいい。「どうすればもっといいストーリーになるか?」

 

アメリカのバンド「ディアハンター」のメンバー、ブラッドフォード・コックスがこんなことを言っている。彼が子どものころには、インターネットがなかった。だから、好きなバンドのニュー・アルバムを聴くには、正式な発売日まで待たなくちゃいけなかった。そこで、彼はこんな遊びを考えた。

自身のヒーローへの深い敬愛が創作のエネルギーに

まず、自分の期待する音楽を想像しながら、ニュー・アルバムの“フェイク”版を制作する。そして、アルバムが発売されたら、自作の音楽と本物のアルバムの曲を比べるのだ。びっくりすることに、そうして作曲された音楽の多くが、ディアハンターの楽曲になったのだという。

 

僕たちは、ひとつの作品が好きになると、もっとほしくなる。続きが知りたくなる。その欲求を、創作のエネルギーに変えればいい。

 

オースティン・クレオン

作家

アーティスト

講演家

※本連載は、オースティン・クレオン氏の著書『クリエイティブの授業』(実務教育出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

クリエイティブの授業

クリエイティブの授業

オースティン・クレオン

実務教育出版

作家、アーティスト、講演家として幅広く活躍する著者が、自身の創作活動を通じて学んだ教訓を「クリエイティブな人生を送る10のヒント」として紹介。 ユーモア、ウィット、示唆に富む著者自身のメッセージのあいだに、デヴィ…

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