知っていること好きなことを書く
映画『ジュラシック・パーク』が公開されたのは、僕の10歳の誕生日だった。熱狂した。映画館を出た瞬間から、続きが見たくてたまらなくなった。次の日、僕は古いパソコンの前に座って、続編を書きはじめた。シナリオはこうだ。
ヴェロキラプトルに食べられた恐竜監視員の息子が、パークを建設した男の孫娘とともに、島に戻る。1人は残ったパークを破壊しようとするが、もう1人は存続させようとする。もちろん、2人は恋に落ち、さまざまな冒険を繰り広げるってわけだ。
当時は知らなかったが、僕が書いていたのは「ファン・フィクション」って呼ばれるものだ。つまり、既存の登場人物をもとに作ったフィクションだ。
10歳の僕は、シナリオをハードディスクに保存した。数年後、待ちに待った『ジュラシック・パーク2』が公開された。最悪だった。続編ってのは、たいていみんなの期待を裏切る。
フィクションはすべてが“ファン・フィクション”(2次創作)
若い作家はあるとき必ずこんな疑問を持つ。自分は何を書けばいいのか? 「知っていることを書け」ってのがよくある答えだ。このアドバイスに従うと、たいていは面白いことが1つも起こらない、ひどいストーリーができあがる。
僕たちがアートを作るのは、アートが好きだからだ。僕たちがある作品に惹かれるのは、その作者に刺激を受けるからだ。突きつめていえば、フィクションはどれも“ファン・フィクション”なんだ。
だから、いちばん大事なのは、知っていることじゃなくて、好きなことを書くことだ。自分のいちばん好きなストーリー、自分の読みたいストーリーを書こう。人生や仕事も同じ。筋書きに迷ったときは、こう自問すればいい。「どうすればもっといいストーリーになるか?」
アメリカのバンド「ディアハンター」のメンバー、ブラッドフォード・コックスがこんなことを言っている。彼が子どものころには、インターネットがなかった。だから、好きなバンドのニュー・アルバムを聴くには、正式な発売日まで待たなくちゃいけなかった。そこで、彼はこんな遊びを考えた。
自身のヒーローへの深い敬愛が創作のエネルギーに
まず、自分の期待する音楽を想像しながら、ニュー・アルバムの“フェイク”版を制作する。そして、アルバムが発売されたら、自作の音楽と本物のアルバムの曲を比べるのだ。びっくりすることに、そうして作曲された音楽の多くが、ディアハンターの楽曲になったのだという。
僕たちは、ひとつの作品が好きになると、もっとほしくなる。続きが知りたくなる。その欲求を、創作のエネルギーに変えればいい。
オースティン・クレオン
作家
アーティスト
講演家