ドラマツルギーという言葉の意味は?
ドラマツルギーって言葉を知っているかい? この聞き慣れない単語の意味は、400年ほど前、ウィリアム・シェイクスピアが喜劇『お気に召すまま』の中で説明している。
この世はすべて舞台だ
男も女もみな役者にすぎない
退場もあれば登場もある
そして1人1人が一生に何役も演じる
簡単に言えば、「できるまでは、できるフリをしろ」ってことさ。
僕はこのフレーズが大好きだ。解釈は2通りある。
- なりたい自分になれるまで、そのフリをしろ。みんなが自分の思いどおりに見てくれるまで、その自分を演じろ。
- 実際に何かを作れるようになるまで、作っているフリをしろ。
僕はどっちの解釈も好きだ。自分のしている仕事じゃなく、自分のしたい仕事の身支度をしなくちゃいけない。そして、自分のしたい仕事を、すぐに始めなきゃいけない。
僕はミュージシャンのパティ・スミスの著書『JustKids』も好きだ。アーティスト志望の2人の若者が、ニューヨークへと移る話を描いている。2人がどうやってアーティストになったかわかるかい?
アーティスト? キッズ? 人によって見え方が異なる2人の若者
2人はアーティストを演じたんだ。本のタイトルにもなった、僕のお気に入りのシーンがある。パティ・スミスと、友人で写真家のロバート・メイプルソープは、ヒッピー風の格好をして、人々でにぎわうワシントン・スクエア・パークに行く。
観光客の夫婦が2人をじっと見つめる。妻が夫に言う。「ねえ、写真を撮っておきましょう。多分、アーティストよ」。すると夫が答える。「いいや、あいつらはただの子どもさ(ジャスト・キッズ)」
役を演じつづけることで本物に
僕が言いたいのはこういうことだ。この世はすべて舞台だ。創作の仕事というのは、一種の演劇みたいなものだ。舞台は、君のスタジオ、君のデスク、君の作業場。衣装は、君の仕事着だ̶̶ペインター・パンツ、ビジネス・スーツ、あるいは、頭が冴えるというシルクハット。小道具は、君の素材、道具、媒体だ。そして台本は、時間そのもの。こっちで1時間、あっちで1時間。ただ出来事が起きていく時間が台本なんだ。
できるまでは、できるフリ。
オースティン・クレオン
作家
アーティスト
講演家