(※画像はイメージです/PIXTA)

「新しい」ものをつくらなければならない、しかし、「何から始めていいか分からない」という人はとても多いのではないでしょうか。アーティストのオースティン・クレオン氏は、新しい物を生み出すには、まず「盗む」ことが重要だと言います。オースティン・クレオン氏が既存のものを「盗む」方法と、そのメリット、「盗む」ことに対する姿勢などについて語ります。

ドラマツルギーという言葉の意味は?

ドラマツルギーって言葉を知っているかい? この聞き慣れない単語の意味は、400年ほど前、ウィリアム・シェイクスピアが喜劇『お気に召すまま』の中で説明している。

 

この世はすべて舞台だ

男も女もみな役者にすぎない

退場もあれば登場もある

そして1人1人が一生に何役も演じる

 

簡単に言えば、「できるまでは、できるフリをしろ」ってことさ。

 

僕はこのフレーズが大好きだ。解釈は2通りある。

 

  1. なりたい自分になれるまで、そのフリをしろ。みんなが自分の思いどおりに見てくれるまで、その自分を演じろ。
  2. 実際に何かを作れるようになるまで、作っているフリをしろ。

 

僕はどっちの解釈も好きだ。自分のしている仕事じゃなく、自分のしたい仕事の身支度をしなくちゃいけない。そして、自分のしたい仕事を、すぐに始めなきゃいけない。

 

僕はミュージシャンのパティ・スミスの著書『JustKids』も好きだ。アーティスト志望の2人の若者が、ニューヨークへと移る話を描いている。2人がどうやってアーティストになったかわかるかい?

アーティスト? キッズ? 人によって見え方が異なる2人の若者

2人はアーティストを演じたんだ。本のタイトルにもなった、僕のお気に入りのシーンがある。パティ・スミスと、友人で写真家のロバート・メイプルソープは、ヒッピー風の格好をして、人々でにぎわうワシントン・スクエア・パークに行く。

 

観光客の夫婦が2人をじっと見つめる。妻が夫に言う。「ねえ、写真を撮っておきましょう。多分、アーティストよ」。すると夫が答える。「いいや、あいつらはただの子どもさ(ジャスト・キッズ)」

役を演じつづけることで本物に

僕が言いたいのはこういうことだ。この世はすべて舞台だ。創作の仕事というのは、一種の演劇みたいなものだ。舞台は、君のスタジオ、君のデスク、君の作業場。衣装は、君の仕事着だ̶̶ペインター・パンツ、ビジネス・スーツ、あるいは、頭が冴えるというシルクハット。小道具は、君の素材、道具、媒体だ。そして台本は、時間そのもの。こっちで1時間、あっちで1時間。ただ出来事が起きていく時間が台本なんだ。

 

できるまでは、できるフリ。

 

オースティン・クレオン

作家

アーティスト

講演家

※本連載は、オースティン・クレオン氏の著書『クリエイティブの授業』(実務教育出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

クリエイティブの授業

クリエイティブの授業

オースティン・クレオン

実務教育出版

作家、アーティスト、講演家として幅広く活躍する著者が、自身の創作活動を通じて学んだ教訓を「クリエイティブな人生を送る10のヒント」として紹介。 ユーモア、ウィット、示唆に富む著者自身のメッセージのあいだに、デヴィ…

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