(※画像はイメージです/PIXTA)

「新しい」ものをつくらなければならない、しかし、「何から始めていいか分からない」という人はとても多いのではないでしょうか。アーティストのオースティン・クレオン氏は、新しい物を生み出すには、まず「盗む」ことが重要だと言います。オースティン・クレオン氏が既存のものを「盗む」方法と、そのメリット、「盗む」ことに対する姿勢などについて語ります。

ビートルズはコピー・バンドから始まった

誰もスタイルや個性を持ったまま生まれてくるわけじゃない。自分が誰だかわかって生まれてくるわけじゃない。僕たちはまず、自分のヒーローのまねから始める。“コピー”して学んでいくわけだ。

 

といっても、僕の言うコピーというのは、練習であって盗作じゃない。盗作ってのは、他人の作品を自分の作品にしてしまうことだ。コピーとは、いわばリバースエンジニアリングだ。整備士が車を分解して仕組みを調べるのと似ている。

 

私たちは文字をなぞって書き方を覚えた。ミュージシャンは音スケール階をくり返して弾き方を覚えた。画家は名画を模写して描き方を覚えた。

 

いいかい? ビートルズだって最初はコピー・バンドだったんだ。ポール・マッカートニーは言っている。「バディ・ホリー、リトル・リチャード、ジェリー・リー・ルイス、エルヴィスをコピーした。みんなでね」と。

 

マッカートニーと、パートナーのジョン・レノンは、史上最高の作曲家コンビとして歴史に名をとどろかせた。でも、マッカートニーが言うには、2人がオリジナル曲を書きはじめたのは、「ほかのバンドには演奏できない曲を作るため」だった。

1人を真似れば“盗作”、100人を真似れば“オリジナル”

スペインの画家、サルバドール・ダリはこう言っている。「何もまねしたくないなんて言っている人間は、何も作れない」

 

まずは、コピーする相手を見つけることだ。見つかったら、次はコピーする作品だ。

 

コピーする相手を見つけるのは簡単だ。君の大好きな人、君に刺激を与えてくれる人、君が憧れる人をコピーすればいい。一言でいうなら、君の“ヒーロー”だ。作曲家のニック・ロウは言っている。「まずは自分のヒーローの全作品を作りなおそう」と。といっても、1人のヒーローからまるまる盗んじゃいけない。ヒーロー全員から盗むんだ。

 

作家のウィルソン・ミズナーは、「1人の作家をコピーするのは盗作だが、何人もの作家をコピーするのは研究だ」と言っている。

 

かつて、漫画家のゲイリー・パンターがこんなことを言ったのを覚えている。「君がたった1人の影響しか受けていなければ、君は第2の○○と呼ばれるだろう。だが、100人から盗んでしまえば、“君はオリジナルだ!”と言われるのだ」

 

コピーする作品を見つけるのはもう少し厄介だ。単にスタイルを盗んじゃいけない。スタイルの奥にある“考え方”を盗もう。君にとって大事なのは、ヒーローのように見えることじゃなくて、ヒーローのように見ることだ。

 

ヒーローのひととなりやスタイルをコピーする理由はただ1つ。心の内側をのぞきこめるかもしれないからだ。大切なのは、その人の世界観を自分の一部にすること。作品の本質を理解せずに、上っ面だけをまねていたら、君の作品はせいぜい贋作にしかならない。

 

オースティン・クレオン

作家

アーティスト

講演家

 

※本連載は、オースティン・クレオン氏の著書『クリエイティブの授業』(実務教育出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

クリエイティブの授業

クリエイティブの授業

オースティン・クレオン

実務教育出版

作家、アーティスト、講演家として幅広く活躍する著者が、自身の創作活動を通じて学んだ教訓を「クリエイティブな人生を送る10のヒント」として紹介。 ユーモア、ウィット、示唆に富む著者自身のメッセージのあいだに、デヴィ…

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