(写真はイメージです/PIXTA)

米国での金融引き締めや、中国の不動産バブル崩壊、ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰……2022年は世界経済にとって大打撃となる出来事が多く、「大不況になって当然」の1年でした。しかし、さまざまな理由からそのような事態にならなかったと、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。2022年の世界経済が活力を失わなかったワケをみていきましょう。

まったく新たな「ドル安定の時代」へ

このようにドルが辿り着いた新境地は、これまでの為替論議がまったく想定してこなかったもの、市場参加者もアカデミズムにとっても、未踏の新領域である。

 

これまで多くの論客がその時代のドルと円を巡る思想をリードする分析を提示し、市場参加者に新たな知見を示した。

 

巨額の対外債務の下でドル高は持続可能ではないと主張したポール・クルーグマン氏(“Sustainability and the Decline of the Dollar” 1985年)、対米大幅貿易黒字の日本は輸入障壁を撤廃しない限り為替市場は際限のない円高で反応すると主張したリチャード・クー氏(「良い円高悪い円高」1994年)、

 

累積債務で紙くずになるはずのドルを、貿易黒字を積み上げることでため込んでいる日本経済の愚を批判した吉川元忠氏(「マネー敗戦」1998年)、三國陽夫氏(「黒字亡国」2005年)などは、歴史に残る分析である。

 

しかしいま我々はまったく次元の異なる、新たなドル安定の時代に立ち至っている。

 

 

武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

※本記事は、武者リサーチが2022年12月1日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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