再就職に必要な「ギブファースト」意識
▼次の仕事につながる「ギブ」
髙橋:60歳になってもまだ大丈夫と思えてきました。ありがとうございます。ところで今後は長く働く社会になっていくと思います。そんな中、自分が望む仕事をしたいと思う人も多いと思うのです。そんな仕事を見つけるきっかけはどのようなものがあるのでしょうか。
大江:きっかけというのは本当に様々ですから、こういうものが典型的なきっかけです、みたいなものってないですね。それはもう人それぞれだし。本当に偶然とか出会いがしらみたいなこともあります。私の場合は、個人投資家が集まる会合に出始めたのがきっかけでしたね。
毎月顔を出すようになると色々面白い人やメディアで活躍している人も参加されていました。やがてそんな人たちとお付き合いするようになって、少しずつきっかけができてきたんです。
例えばその会で、「大江さんは何をやっていたんですか」と聞かれてお話したら「じゃあ確定拠出年金は専門ですね」と言われて、「じゃあ今度、確定拠出年金について、記事を書きたいんだけども、ちょっと教えてくれませんか?」ということになってお話しする機会ができたんですよ。
でも私はそれで何も見返りをもらっていませんから、言わば一方的にギブするだけなんですね。通常のビジネスにおける対価を伴うギブ&テイクの関係ではない。ところが、そのうち「『日経マネー』から年金の取材をしたいとオファーが来ているんだけど、私はよくわかんないから大江さん代わりに受けてくれますか?」みたいなことが入ったりしてね。
よく「情けは人のためならず」って言いますけど、これ、まさにギブをやってなかったら絶対来なかったですね。
髙橋:たしかに独立されて自分で会社を持たれている方は、まず人に与えることから始めないといけない、取るばかりだと上手くいかないとよくおっしゃいますね。
大江:そもそも自分は何者か、何ができるか、ということを相手は何も知りません。当然知らない人には仕事は絶対くれないですよね。だから自分はこれができるんだっていうことを、相手に認めてもらわなきゃダメですよね。相手に認めてもらうためには、相手のために役立つことをやってあげないとダメなんですよ。
ギブファーストっていうとみんな綺麗事だとかって言うんです。いや、綺麗事じゃないですよ、儲けるためにはそれをやらないといけないということなんですね。
髙橋:相手に自分を知ってもらうきっかけを作ると考えればいいのですね。
大江:そうです。だってこんなね、60歳のおっさんに何ができるかって誰も興味なんかないですよね(笑)。だからまずは人に何かをしてあげること、そうすれば「この前は親切に教えてくれて助かりましたよ。
ところでこんな仕事あるんだけど、ちょっとやってみる気ありますか?」みたいなことになるんですよ。だから僕の仕事のきっかけは全部紹介です。こちらから売り込みに行ったことは一件もありません。
髙橋:よく運、きっかけは人が運んでくるって言いますよね。
大江:それはその通りだと思います。だからきっかけは色々あるんですけど、それを見つけるために心がけておくことが二つあって、一つは好奇心をなくさないこと。感度を高く持っていることですね。アンテナを常に張り続ける。もう一つが人との接触を増やすことですね。引っ込み思案にならずに、いろんな人と接触をして行く。接触して行くと、相手の為に何か役に立つことができる瞬間が出てくるわけですよ。皆さんもサラリーマンをやっていたわけですから。その仕事が何であれ人に役立つことはありますよ。