(写真はイメージです/PIXTA)

近頃は日本でも、著名な経営者や資産家による多額の寄附が話題となることが増えてきました。経営者が「出身校」へ法人寄付することは、相続税対策になるのでしょうか? 岡野相続税理士法人の代表社員、岡野雄志税理士が詳しく解説します。

社長が選んだ寄附の方法は…?

12月は『寄付月間(Giving December)』

次にBさんが考えたのが、「企業版ふるさと納税」です。令和2年度税制改正で自治体への寄附額から控除される税額も増え、企業のメリットも増えました。しかし、「企業版ふるさと納税」は、自治体作成の地方版総合戦略が内閣府の認可を受けた事業であることが寄附先の要件です。また、以下は対象外です。

 

x 本社が所在する都道府県や市区町村

 

x 事業を実施する年度の前年度において国から地方交付税の交付を受けずに財政運営を行っている都道府県や市町村

 

x 事業を実施する年度の前年度において国から地方交付税の交付を受けずに財政運営を行っていて、かつその全域が地方拠点強化税制における地方活力向上地域以外の地域に存する市区町村

 

 

結局、Bさんは会社からの寄附はあきらめ、自分のポケットマネーから出身校のあるふるさとの自治体へ寄附することにしました。会社にとっても税制優遇のメリットがあるのではないかという心算に蹴りをつけ、本来の「フィランソロピー」を優先したのです。

 

さらに、お子さんのいないBさんは奥様とも相談して、出身地へ「遺贈寄附」するための遺言書も作成することにしました。「遺贈寄附」すると遺言した団体が、相続発生時には実体がなくなっていることもあり得ますが、自治体であればその心配はほぼありません。

 

原則として、遺言により「遺贈寄附」された自治体や法人に、相続税は課されません。そのため、故郷やゆかりの地への「遺贈寄附」が増えています。著作権を寄附した作家や記念館を寄附した著名人もいます。奈良県生駒市『ふるさとレガシーギフト』のように、「遺贈寄附」の仕組みを作る自治体もあります。

 

しかし、「遺贈寄附」されたのが個人や公益活動をしておらず法人格のない団体の場合、原則的に相続税が課税されます。株式会社などの場合は、法人税が課されます。「遺贈寄附」の遺言書を作成する前に、弁護士や税理士などの専門家へ相談したほうがよいでしょう。

 

12月は『寄付月間』。民間主導の取り組みでしたが、16年6月に閣議決定された「骨太の方針」にも推進する旨が盛り込まれました。相続税対策とともに、「生前の寄附」や「遺贈寄附」について考えるには、いい機会かもしれません。

 

 

岡野雄志

岡野相続税理士法人

 

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