(写真はイメージです/PIXTA)

近頃は日本でも、著名な経営者や資産家による多額の寄附が話題となることが増えてきました。経営者が「出身校」へ法人寄付することは、相続税対策になるのでしょうか? 岡野相続税理士法人の代表社員、岡野雄志税理士が詳しく解説します。

出身校に寄附したい!経営する会社から行うと…

会社経営者のBさんは、コロナ禍にあっても事業が順調なため、会社から出身校への寄附を思いつきました。近年、少子化や過疎化で、公立小中学校の統廃合が進んでいます。2019~2022年度の3年間で統廃合された全国の義務教育学校は437件に上ります。

 

Bさんの母校も過疎地にあり、規模は小さいながら、わずかな子どもたちの勉学を支えています。通学事情を考えると、近隣に統合できる学校もありません。中卒で手に職をつけ、事業を興すまでになったBさんは、母校の窮状をなんとかしたいと常々思ってきました。

 

企業などの法人が国や地方公共団体、特定公益増進法人等へ寄附した金額は、「損金算入」することができます。「損金」とは、読んで字のごとく「損して失った金額」のことですが、会計上、全額差し引ける「経費」「費用」とは異なります。「損金」は、法人税の計算上、法人資産の評価損として扱われる金額のことです。法人税の計算過程で「損金」として計上できる代表例は、「法人事業税」「所得税」「固定資産税」「不動産取得税」などとなります。

 

法人が支出した寄附金の場合、寄附先によってその全額または一部が「損金」扱いとなり、所得税や法人税が控除されます。寄附先の種類は、大きくわけて以下の4種類となります。

 

1.国・地方公共団体

国や都道府県、市区町村に対する金銭などの寄附は、支払った全額が損金に算入されます。震災などの義援金を、国または地方公共団体へ直接寄附したものも該当します。

 

2.財務大臣指定の寄附先

「広く一般に募集されていて」「公益性および緊急性が高い」として、財務大臣が指定します。「指定寄附金」と呼ばれるもので、全額が損金に算入されます。具体例としては、赤い羽根募金、日本赤十字社への寄附で財務大臣の承認を受けたものなどです。

 

3.特定公益増進法人等

教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など公益の増進に著しく寄与すると認められた一定の公益法人等を指します。寄附金合計額と特別損金算入限度額とのいずれか少ない金額が損金に算入されます。具体例としては、日本赤十字社の事業費、通常経費に対する寄附、認定NPO法人の特定非営利活動に関する寄附などです。

 

4.上記以外

1~3以外の寄附金は、「一般の寄附金」として一定の範囲内で損金に算入されます。具体例としては、町内会、政治団体、宗教法人、学校法人、独立行政法人などへの寄附です。

 

しかし、Bさんの篤志に水を差す気はありませんが、寄附先が社長の出身校というだけでは、法人寄附が適しているとはいえません。本来は社長個人が寄附すべき対象であって、業務上の必要支出ではないからです。その母校から新入社員を毎年採用しているとか、母校に学用品を納めているとか、会社のビジネスに関連しているなら話は別ですが……。

 

社長の個人支出を会社が提供したことになり、経理上は社長への賞与となります。役員賞与は損金不算入のため、損金へ算入できません。また、社長が個人寄附すべき対象に対して会社から法人寄附すれば、法人税逃れとして税務署にも目を付けられかねません。

 

もちろん、個人からの寄附にも税制優遇はあります。国や地方公共団体、特定の法人などに寄附をしたら、確定申告をすることで、所得税・復興特別所得税の寄附金控除などが受けられます。ただし、Bさんが寄附したい母校は公立校ですので、その学校に直接寄附できる訳ではありません。寄附先は、その学校が設置されている国や都道府県、市区町村となります。

 

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