子どもがいる場合の遺族年金は?
夫:公的年金には、①老後に長生きしたときの生活費となる老齢年金と、②世帯主が亡くなって残された妻子の生活を守る遺族年金があると聞きました。遺族年金とは、どのような制度なのでしょうか?
K先生:万が一、稼ぎ頭の君が先に死んでしまったら、奥さんやお子さんが生活できなくなってしまうよね。そんなリスクを守るために、日本には「遺族基礎年金」の制度と、「遺族厚生年金」の制度があって、18歳までの子どもがいる遺族には、生活費が支給されることになっているんだよ。
妻:18歳までというのは、未成年者という意味ですか?
K先生:これは、ちょっと細かな法律の決め事だけど、年金法上の「子ども」には以下の2パターンがあるんだよ。
●20歳未満で1級または2級の障害状態にある子
この条件に該当し、現に婚姻していない人のことをいうんだ。
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「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の違いって?
夫:遺族基礎年金と遺族厚生年金は、どのように違うのですか?
K先生:遺族基礎年金は、国民年金に加入していた人たちが、子どもが18歳になるまでもらえる年金なんだよ。20歳以上60歳未満の人たちは、すべて国民年金に加入する義務があるから、遺族基礎年金はすべての国民がもらえる年金だね。それに対して遺族厚生年金は、第2号被保険者と呼ばれる会社員の人たちが、遺族基礎年金に上乗せしてもらえる年金なんだ。
妻:会社員のほうが、たくさん年金をもらえるんですね。
K先生:その分、会社員は年金保険料を多く納めているけどね。
【遺族基礎年金】について学ぼう
夫:国民年金に加入していると、いつでも遺族基礎年金がもらえるんですか?
K先生:いや、年金保険料をきちんと納めていないと、年金はもらえないんだ。保険料を免除されることもあるけど、加入していた期間の3分の2以上の期間の年金保険料を納めていないといけないんだよ。
◆子どもがいないと、遺族基礎年金はもらえない!
妻:子どものいない奥さんはどうなんですか?
K先生:子どものいない奥さんは、遺族基礎年金をもらえないんだよ。会社員の妻だと遺族厚生年金をもらえるけど、自営業の妻だと、かわいそうだけど何ももらえないんだよね。
◆遺族基礎年金の受給金額について
夫:なるほど! 遺族基礎年金は養育費みたいな感じですね。それで、金額はいくらですか?
K先生:遺族基礎年金は、2022年度では一律77万7,800円、子ども1人につき22万4,700円だったから、ひとり人っ子だと100万円、2人兄弟だと125万円だと覚えておけばいいよ。3人きょうだいはちょっと少なくなって135万円くらいなんだけどね。
妻:年間100万円だと、月に8万円ちょっとしかもらえないんですね。それでは生活が苦しいですよ。
K先生:そうかもしれないね。だから、会社員の夫が亡くなった場合には、遺族厚生年金が上乗せして支給されるんだ。しかも、子どもが18歳になったあとも、一生涯にわたってもらえるんだ。
夫:それはいいですね!
【遺族厚生年金】について学ぼう
妻:遺族厚生年金は、会社員の遺族であれば、誰でももらえるんですか?
K先生:いや、遺族基礎年金と同じで、加入していた期間の3分の2以上の期間の年金保険料を納めていないともらえないんだよ。
◆遺族厚生年金の受給金額について
夫:遺族厚生年金の金額はいくらですか?
K先生:年金額は夫の死亡時までの年収や加入期間に応じて変わるんだけれど、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3なんだ。
夫:えーっと、老齢厚生年金の報酬比例部分って何ですか?
K先生:老齢厚生年金というのは、会社員が65歳からの生活費として一生涯にわたって受け取ることができる年金のことだね。10年以上加入という要件はあるけどね。それは、わかるかな?
夫:はい、老後の年金のことですね。それが報酬比例って何ですか?
K先生:これはね、夫がもらってた報酬の金額の大きさと年金の加入期間の長さによって計算する年金額のことなんだ。
正確な計算式は難しいから、毎月の報酬の0.6%に加入期間を掛けた金額が、支給される年金の報酬比例部分だと大雑把に覚えておいたらいいよ。この4分の3が遺族厚生年金だね。
◆働き手が若くして亡くなった場合の救済措置について
妻:働いた年数に比例するんですか? そうすると、夫が若くして死んでしまうと、年金額はとても小さな金額になってしまいますね。
K先生:そこは救済措置があるんだ。加入期間が25年未満の場合は、25年間すなわち300ヵ月加入したものとみなして遺族厚生年金を計算してくれるんだよ。
夫が35歳で死亡したとしたら、遺族厚生年金は40万円くらいだね。遺族基礎年金と合わせると、140万円くらいだから、毎月12万円くらいは支給されるということだ。
妻:それでも、子どもが18歳になると、遺族基礎年金がもらえなくなってしまいますから、奥様の生活が苦しくなりますよね。
K先生:いいところに気がついたね。その通りだ。奥様が自分の老齢基礎年金をもらえるようになるのは65歳だから、それまでの期間の収入は、遺族厚生年金だけになってしまう。そこで、中高齢寡婦加算という制度があるんだよ。
妻:なるほど、それはいいですね! 金額はいくらですか?
K先生:中高齢寡婦加算は年58万円だね。妻が40歳以上で、65歳未満であって、生計を同じくしている子どもがいなければ、受け取ることができるんだ。ただし、遺族基礎年金よりも少なくなってしまう。それでも子どもが独立した後の生活だから、奥様1人で何とか生活できるんじゃないかな。
妻:それで奥さんが65歳になると老齢基礎年金がもらえるようになるんですね。金額はいくらでしょうか?
K先生:20歳から60歳までの保険料をすべて納めていると、満額の老齢基礎年金は77万円ちょっとだね。
★遺族基礎年金の受給要件はこちらをチェック
【遺族基礎年金】受給要件と年金額は?寡婦年金と死亡一時金まで【FP3級】
◆子どもがいない場合の遺族年金は?
夫:子どもがいないこともありますよね。奥さんが1人で残された場合は、どうなるんでしょうか?
K先生:夫が会社員の場合、子どもがいなくても遺族厚生年金をもらえることは、先ほど話したよね。しかし、子どもがいない場合には、遺族基礎年金がもらえないんだ。
夫:そうすると、夫が自営業の場合は、遺族年金はゼロですか?
K先生:いや、遺族年金がゼロだとすると、夫が自分で支払い続けてきた国民年金保険料が掛け捨てになってしまって、かわいそうだよね。そこで、死亡一時金と寡婦年金の制度があるんだ。どちらか好きなほうを選択することになっているね。
妻:それらはいくらもらえるんですか?
K先生:寡婦年金は、下記の条件を満たす妻が65歳になるまでもらえる年金だけど、
●障害年金をもらっていない
●夫婦の婚姻期間が10年以上
夫の老齢基礎年金の4分の3だけもらえるんだ。
妻:その計算だと、かなり少ない金額でしょうね。
K先生:死亡一時金は、加入期間が3年以上ある夫が死亡し、障害年金をもらっていない場合は、12万円から最大32万円もらえるんだ。
夫:なるほど、自営業の奥さんの生活はとても厳しくなりますねー。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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