企業が迫られる変革
国だけではなく、企業も変革を迫られています。
日本の民間企業の平均給与は、1989年の452.1万円から2018年には433.3万円へと下がっています。国際的にも、この日本の給与は低水準です。OECD(経済協力開発機構)加盟の38ヵ国の週平均労働時間に対するフルタイム雇用者の平均賃金を比較すると、全加盟国の平均49.2ドルに対し、日本は38.5ドル。アメリカの69.4ドル、ドイツの53.7ドルに遠く及ばず、韓国の41.9ドルよりも下回っています。
人口が減ると、内需への依存度が高い企業は必然的に売り上げが低下します。企業は、小さくなり続けるパイを奪い合う国内市場から、グローバルな競争に打って出る必要に迫られていきます。
競争が激化する中、企業は生き残るために「贅肉」を削ぎ落とそうとします。ベテラン社員の解雇、福利厚生や企業年金のコストカット、業務のアウトソーシング化が進行。仕事がなくて暇な高収入の正社員を雇い続ける余裕はなくなるのです。
そうした環境の下で、雇用の仕組みも今後大きく変わっていきます。これまで主流だった、必要に応じてさまざまな仕事をさせる「メンバーシップ型」の雇用から、専門性の高い業務だけを担わせる「ジョブ型」の雇用への転換です。新卒で採用した正社員を定年まで勤めあげさせる終身雇用はもう過去の話で、人材は社内外の人材プールからプロジェクトごとにアサインされるようになります。
そうなれば正社員の数は大幅に減り、非正規社員を活用するようになります。正社員には高度なデジタル技術や経営、マネジメントなど、より専門性の高いスキルが求められ、単純作業は正社員のする仕事ではなくなります。
「ワーク・ライフ・バランス」のとれた働き方が推進されますが、労働時間が減れば給与は減ります。家族を養い、子どもを大学まで行かせつつ、老後の資金を貯めるには、正社員の給与だけでは足りなくなります。副業をする、あるいは夫婦ともにフルタイムで働くスタイルが一般的になるでしょう。もちろん、家事や育児の男性参加も必須です。