中核的要素まで減った「職場内コミュニケーション」
コロナの影響もあり、職場のコミュニケーションの方法はここ数年間で大きく変わった。リクルートワークス研究所の調査によると、コロナ禍を境に、対面でのやり取りが「減った」は67.1%に上った。その一方で、画面に顔を映したWeb会議は54.9%、音声のみのWeb会議は44.9%、メールやチャットでのやり取りは44.8%が「増えた」としている。
一定数の職場でテレワークの導入が進んだことから、対面でのやり取りが全国の職場で大きく減少した。ただし、対面でのやり取りが減ったから仕事におけるコミュニケーションの手段がなくなったわけではなく、その代わりにWeb会議やメールやチャットなどの手段でのコミュニケーションを増やす工夫が行われている。
コロナ禍で起きた職場におけるコミュニケーションの方法の変化は、職場における集まる場を変えた。ランチや飲み会、研修といった対面でのやり取りの場が減ったことは当然として、注目すべきは「仕事とは関係のない雑談」や「会議の前後に発生する会話」の減少である。こうした偶発的な機会の減少が、コロナ禍以降の集まる場の変容の中核的な要素を成しているのである。
「偶発的な会話」の減少による問題点
前述のように、職場での雑談をはじめとする偶発的な機会が減少し、職場における集まる場は変化した。こうしたなか、集まる場の変化は、個人にどのような影響をおよぼしているのか。まずは、職場における経験の変化をみていく。私たちは職場で仕事をしている際に、日々さまざまなことを経験している。同僚の仕事を手伝ったり、他部署の人と関わったり、さらには偶然ほかの人たちの会話が聞こえてきたり。
本記事では、普段は意識しないこういった経験について、その変化の中身を洗い出していく。職場における経験のコロナ禍前からの変化をみると、このような経験は総じて減少している(図表2)。特に減少が著しいのは、「たまたま出会ったり、予定していなかった人との情報交換」「他部署や社外の人との新たな出会い」。つまり、これまで職場で集まっていたときに自然と行われていた「人と人が交わることによる化学反応」がコロナ禍以降は失われてしまっている。
職場の状況を知る機会も減少している。日々の業務を行ううえで、関係者と円滑に物事を進めるためにも、他者の仕事の状況を理解しておくことは重要である。しかし、上司や同僚、部下の仕事の内容や忙しさを知る機会はコロナ禍を経て減少していることがわかる。これに加えて、他部署の取り組みや社内の誰が重要な情報を持っているかなどを知る機会も減少傾向が強くでている。
コロナ禍を経て、職場における偶発的な機会が減少するなど集まる場は変わった。そして、それはもっぱら個人の行動のサイロ化をもたらすことになった。一部の人の仕事の仕方は、自然と自己解決するようなものに変わってきており、職場において各社員が孤立化している可能性がある。その結果、相談しづらかったり、誰に相談してよいかわからなくなり、エンゲージメントが低下し、離職に陥るケースも増えてきている。