(※写真はイメージです/PIXTA)

ドル高円安が進むなか、これから為替はどうなっていくのか? このまま資産を円だけで保有していていのか? ドルを持ちつづべきなのか? 疑問や不安の声が聞こえてきます。そこで本記事では、資産の一部を外国通貨でもつメリットと、為替の今後の見通しについて、資産コンサルティング業務を行う田邊陽吉氏が解説します。

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    ドル高円安が止まらないワケ

    ここまで、為替はどちらに動くかは誰にもわからないという話をした。しかし、為替が動く要因の一つ一つを分析し、ある程度今後の動向を予測することはできる。ここからは、足元の円安がどこまで続くのかと、長期的な為替動向について見解を述べていきたい。

     

    まず足元の動向について、ドル高円安が進行しているが、その最大の要因は2国間の金利差である。米国金利の急騰と日本の低金利維持により、金利の低い円から、金利の高いドルへと資金が流れているのだ。つまり、今後円高に振れる局面があるとすると、それは日米間の金利差が縮小するタイミングである。

     

    しかし、現状米国は金利引き下げの姿勢は見せておらず、日銀も4月の黒田総裁退任までは緩和を続ける意向である。政府による介入が行われているが、この構造が変わらない限り、ドル高円安の流れは続いていくだろう。

     

    繰り返しにはなるが、外国為替を持つ意味というのは、短期的に為替で儲ける、損しないためではないという点は、やはり抑えておいてもらいたい。ただ、円高に振れたときにドル資産が目減りしてしまうのが怖いという方も多い。そういう方は、米国の金利が下がった時に、逆に利益が出るものを持つしかない。それなら、ドル建てで長期の債券を持つべきだろう。

     

    為替が金利差によって動くのは、あくまで短期的な動きに限る。為替が長期的に動く要因はその国の国力である。私は、10年20年30年かけて長期的に円安は進んでいくと考えている。長期的に円安が進む理由は大きく2つある。

    長期的に円安が進む理由① 資金の海外流出

    1つは、企業のキャピタルフライトである。日本企業が持つ生産拠点の海外移転によって、現地通貨での生産・販売・投資が増え、稼いだ外貨を円に換える動きが減ったため、徐々に円高圧力が弱くなっている。日本企業の海外生産比率は、1990年の4.6%から2020年には22.4%と5倍近く増えている。この流れは、グローバル化が止まらない限り続き、国内での生産コストを考えると、グローバル化が止まることはないだろう。

    長期的に円安が進む理由② 日本の経済力の低下

    2つ目は、国力の低下である。日本の貿易収支は、輸出のピークであった1990年代前半を境に、徐々に悪化しており、1992年には約15兆7764億円の黒字であったにもかかわわらず、2022年は資源高も相まって、4~9月期だけで11兆75億円の赤字となった。

     

    世界の時価総額ランキングも、30年前には上位50社中32社を日本企業が占めていたが、2022年には1社しかない。国際的に日本の稼ぐ力が弱くなっているのだ。

     

    今後、日本は少子高齢化が止まらず、人口は減少の一途をたどる。外国人からすると日本円を持つ魅力が次第になくなっていき円の需要は減っていくのだ。これらを踏まえると長期的に円の価値が高まるシナリオは描きづらく、円安トレンドは続いていくと考える。

     

    1ドル=200円、300円という時代が来てもおかしくはない。やはり、資産のすべてを円で持つというのはリスクだろう。

    外国通貨をもつのに米ドルを勧める理由

    ここまで、外国通貨をもつ必要性を唱えてきたが、実際にどの通貨を持つべきなのか。私は、まず最初に持つべきは、やはり米ドルであると考える。外国通貨をもつ目的は、資産を守ることであるため、ある程度の流動性が必要になるが、米ドルは基軸通貨であることと世界一の流通量を誇る通貨である。

     

    次に、為替は長期的に国力に比例すると述べたが、世界一のGDPを誇る大国であり、今後も人口の増加が予想されている。さらに、欧州よりも金利水準が高いため、受け取れる金利がその分多い。

     

    以上のことから、資産の一部は米ドルとして持つべきだと考える。

     

    資産運用とは、お金を増やすことだけではない。物価が上がっても資産の購買力が減らないように守ることも資産運用である。ここまで読んでくださった方が、この記事をきっかけに、少しでも外国通貨を持つようになっていただけると、アドバイザー冥利に尽きる。

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