「欲に目がくらむ」と人は正常な判断ができなくなる
Q:チャイナ・ショックで損失を出しました。突然起こる暴落を回避する方法はないのでしょうか?
A:○○ショックという暴落が起きる前には、必ず「暴落が起きるぞ」というサインがあります。
ここでは、暴落のサインに絞って、具体的に説明してみましょう。
リーマン・ショック、チャイナ・ショックなど、暴落のショックは、起こった後からでは誰もが説明できます。しかしその直前まで続いたバブルの渦中にいる時は、なかなか気づくことができません。それは私たち投資家のプロも同じことです。
例えば2000年代初頭のネットバブルの崩壊がありました。
崩壊が起こる直前までは、明らかにIT関連企業の株が異常な株高になっていたので、通常ならば察知できたはずでした。ところが、察知できなかった。なぜでしょう?
2000年年1月にITバブルがピークに達し、天井を打った。ヤフーの株価は歴史的な高値をつけました。1株1億6300万円にもなったのです。1株を買うのに、1億円以上もかかったわけです。これがバブルです。
今から、考えると、バブル当時あちらこちらに天井近くのサインが出ていたのに、気づきませんでした。なぜか? あまりに儲かり過ぎて、欲で、正常な判断ができなくなっていたのです。“欲に目がくらむ”という言葉がありますが、そのような心理状態と言えます。
めちゃくちゃに上がって、しかも毎日のように上がる株もあった。しかし、今から考えてそれがバブルだとわかっても、熱気の中にいると気がつかないものなのです。
筆者はその時まったくバブル崩壊に気づきませんでした。もうどんどん上がるために、「買わないと損する」「まだまだ、天まで上がる」という熱気に一緒に煽られてしまった。そして、ある日突然、天井です。下がる時はもう一気にドンと下がる。100階建てのビルの屋上からエレベーターがノンストップで急落するような下げです。強烈でした。
市井の人々の「過熱ぶり」も暴落のサインのひとつ
しかし2008年9月のリーマン・ショックの時は、事前に察知することができました。リーマン・ショックの起こる半年前、2008年3月、アメリカの大手投資銀行ベアー・スターンズが破綻しました。これがサインだったのです。「これは暴落の兆しだ」と気づきました。
2009年末のドバイ・ショックも、事前に察知できました。ドバイの政府系の投資会社ドバイ・ワールドが世界中からお金を集めてドバイにマンションやオフィスビルを建てていた。これが経営破綻しました。破綻するまでは、設計段階でもマンションやオフィスビルが飛ぶように売れていたのです。何も建っていないのに、です。
筆者がドバイ・ショックを察知したのは、忘れもしない2009年の10月。崩壊する1カ月前です。六本木のある料理屋に行った時でした。
筆者は気の置けない投資家仲間と一緒にその店に行きました。店の女将は、私たちが投資家であることを知っていたので、部屋に入って来ていろいろと話をしていました。その時、ビルのオーナーでもある女将が、
「先日ドバイに行ってきた」
と言うのです。「観光で?」と聞くと、
「いや、ドバイのマンションを3戸買ってきた」
女将によると、不動産投資に初めて手を出したとのこと。その時、筆者は瞬間に、「これはもうドバイバブルの天井だな」と察知しました。ふぐ専門店の女将までが、ドバイの不動産に手を出している。これは市場の過熱であり、相場の飽和状態そのものです。筆者はそれを察知できたため、ドバイ・ショックの影響を避けられました。女将は、おそらく買ったマンションが売れずに、3分の1か4分の1で投げ売りしたでしょう。
このように、暴落のサインは、社会現象、市井の人々の過熱ぶりで、判断することができます。