低水準の労働分配率…日本企業への批判高まる
先日、物価高騰で消費者が生活苦に直面するなか、2021年度の労働分配率が低水準だったという報道がされ、内部留保が拡大する一方の日本企業に対して批判が集まっています。
労働分配率は、企業の稼ぎがどれだけ人件費に回ったかを示す指標。分配率が高いということはそれだけ企業の儲けが賃金にまわっているということであり、従業員にとっては歓迎すべきこと。一方で人件費が経営を圧迫し、投資余力が低下。経営リスクが高まります。一方、分配率が低いということは、それだけ利益を貯めていること。賃金が増えず、消費の伸び悩みに繋がります。
労働分配率は「人件費÷企業が生み出した付加価値×100」で求められます。
ここでいう付加価値とは、簡単にいえば、企業がプラスαで生み出した価値のこと。1万円で仕入れたものを2万円で売れば、1万円の付加価値を創出したことになります。一方、人件費は人にかかる費用全般のこと。給与や賞与のほか、退職金、役員報酬、福利厚生費といったもののほか、研修研究費や賞与引当金繰入額なども人件費にあたります。また一般的に労働分配率は分母となる付加価値が景気感応度の高いものなので、景気拡大局面では低下し、景気後退局面では上昇する傾向にあります。
厚生労働省『令和4年版労働経済の分析(労働経済白書)』で資本金規模別に労働分配率をみていくと、2013年以降の景気拡大局面では、すべての企業規模で低下傾向にありましたが、2020年のコロナ禍による景気減退の影響で企業収益が悪化したことを受け、すべての企業規模で大幅に上昇しました。以降、コロナからの回復へと向かうなか、2021年後半には感染拡大前の水準まで戻りました。つまり企業が利益を貯めこんでいる状態に戻った、ということです(図表1)。
産業別にみていくと、「医療、福祉業」「卸売業・小売業」 「サービス業」などは水準が比較的高く、「情報通信業」「製造業」などは比較的低い傾向にあります。また「運輸業、郵便業」「サービス業」では感染拡大前よりも高い水準ですが、その他の産業ではおおむね感染拡大前と同程度の水準まで戻っています(図表2)。