設計の工夫次第で、ある程度のデメリットは解消可能
前回からの続きです。
③部分共用タイプのメリット、デメリットは、①完全同居タイプと②完全分離タイプで述べたことが、いわば半々の形であてはまることになるでしょう。
まず、メリットとしては、共用部分があるので、①完全同居タイプに比べれば、その分だけ建築コストは下がりますし、またランニングコストも抑えられます。
一方、デメリットとしては、①完全同居タイプと比べればコストがかかること、また③完全分離タイプと比較してプライベートな空間が乏しくなることがあげられるでしょう。もっとも、部分共用タイプは、建て方を工夫することでプライベートなスペースを十分に確保することも可能です。
たとえば、居間や台所は家の中央に設け、そこを境にして一方は親世帯、一方は子世帯の居住区間になるような形に分けるなど、別棟的なイメージとなるような設計にするなどの方法が考えられます。
親世帯がいなくなった後のことも考慮してタイプを決定
ここまで見てきた、①完全同居タイプ、②完全分離タイプ、③部分共用タイプのメリット、デメリットに関しては、二世帯住宅を建てる際に当然、十分に考慮しておくことが必要となります。
それに加えて、前述したように親世帯がいなくなった後のことも考える場合には、さらに別の視点から、3つのタイプのうちいずれが適切なのかを事前に検討しておくことが求められることになります。
まず、賃貸併用住宅として活用する場合には、一般論としては完全分離タイプを選ぶことが望ましいといえます。玄関をはじめ、すべての居住空間が完全に別個のものとなっているので、大きな改修をすることなく、若干のリフォームを行えばすぐにでも賃貸に提供することが可能となるからです。
一方、売却することを想定しているのであれば、むしろ完全同居タイプの方がより適切な選択となるはずです。完全分離タイプのように玄関が2つあって外階段もあるという構造・形状では、基本的に二世帯住宅を求めている人以外にはニーズを期待できず、買い手が大きく限られることになるかもしれません。
このように二世帯住宅を建てる時には、各タイプのメリット・デメリットとあわせて、親世帯がいなくなった後のことも念頭に置いておくことが重要になります。なお、いずれのタイプにするのかを決めるうえでは、親子で住宅展示場に足を運び、二世帯住宅のモデルハウスをいくつか見て回ってみてもよいかもしれません。
現物を実際に目にすることで二世帯住宅で生活するイメージがより明確になりますし、「台所は共用にするのだから大きめの方がいい」「○○があった方がいい」などと親子で意見を出し合うことによって、双方にとって最も理想的な家の形を作り上げることが可能となるでしょう。