前回は、二世帯住宅の3つあるタイプのうち「部分共用タイプ」のメリットとデメリットについて、具体的に解説しました。今回は、二世帯住宅タイプのひとつ、「賃貸併用住宅」の効果的な相続税対策について見ていきます。

「小規模宅地等の特例」が適用される条件とは?

売却ではなく、賃貸併用住宅にすることを選択した場合には、次の相続の段階(子世帯の子どもが相続人となる段階)で「貸付事業用宅地」と認められ、小規模宅地等の特例を使うことも可能となります。

 

すなわち、小規模宅地等の特例は、二世帯住宅のような居住用宅地だけではなく、被相続人が事業を営んでおり、土地が事業用に利用されていた場合にも、一定の要件を満たすことを条件に適用対象となります。

 

事業用に供されている宅地は居住用ではありませんが、多額の相続税がかかると、収入の基盤である事業が継続できず、やはり相続人が生活に困ってしまうおそれがあります。そこで、このような不動産(宅地)に対しても、特例により相続税を減額できる場合が認められているのです。

 

貸付事業用宅地はその一つであり、適用上限面積は200平方メートル、減額割合は50 %となっています。ここでいう「貸付事業」とは、アパート経営や駐車場経営などを意味します。したがって、貸付事業用として所有するアパートや駐車場の敷地が「貸付事業用宅地」となります。

 

「貸付事業用宅地」に特例が適用できるのは、被相続人から親族が事業承継し、かつ、その宅地等を事業承継した親族が取得した場合です。加えて、相続開始時から申告期限までの間その事業を続け、その宅地等を保有している必要があります。

 

したがって、たとえば賃貸併用住宅とその敷地を長男が父親から相続し、賃貸経営を申告期限まで継続し、その敷地もこの長男が申告期限まで保有しているような場合には、特例が適用されることになります。

「リフォームにお金をかける」ことも相続税対策に!?

親世帯の暮らしていた居室を賃貸併用として貸し出す場合には、多かれ少なかれリフォームを行うことになるはずです。実は、リフォームをすることは非常に効果的な相続税対策にもなります。1000万円をかけて建物を新築したケースと比べながらその理由について解説しましょう。

 

まず、相続時に建物の評価額は、固定資産税評価額と同じで建築費のおよそ6割から7割となります。したがって、1000万円で建てた住宅であれば、相続時におおよそ600万から700万円の評価額になります(これだけでも、1000万円を現金でもっている場合と比較すれば、かなりの額の税金を減らしたことになるでしょう)。

 

では、1000万円をかけて既存の家をリフォームした場合には、相続時にそのリフォーム分の評価額はどのようになるのでしょうか。「リフォームによって増加した価値に相当する金額は新築と同様の形で評価されるのではないか。つまり、1000万円はやはり600万円から700万円で評価されることになるのではないか」と思うかもしれません。

 

しかし、答えは何と〝ゼロ円〞です。というのは、程度にもよりますがリフォームをしても固定資産税の評価額は上がらないことになっているのです。そのため、リフォームに投じた1000万円は相続時にはゼロとして評価されることになるのです。

 

このように、リフォームについては、お金をかければかけるほど相続税を減らすことが可能となるのです。

本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『親子で進める二世帯住宅節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

親子で進める二世帯住宅節税

親子で進める二世帯住宅節税

斎藤 英一

幻冬舎メディアコンサルティング

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