1995年を境に消滅した、「ドル安円高」の大きな流れ
1973年に変動相場制に移行してから1995年まで、大きな流れとしてドルが安くなっていきました。日本の製造業が設備投資等によって、「安くていいもの」を大量に作れるようになり、輸出が増えていったからです。
しかし、1995年を境に、ドル安円高の大きな流れが消滅します。日本のほうが米国よりも物価上昇率が低いという点はその後も変化していないのですが、それでもドル安円高にならない理由が数多くあるからです。
まず、日本人投資家が米国債や米国株などへの投資を積極的に行うようになりました。とくに、日本国債より米国債のほうが金利が高いことから米国債を買う投資家が増え、金利の差が大きければ大きいほど増える、ということが顕著になっています。
また、日本の製造業が「日本で作って輸出する」という方針を変更し、「売れる場所で作る」という方針を採用するようになったので、輸出が減りました。かつて日本の貿易収支は大幅な黒字でしたが、最近では概ねゼロとなっていて、今年は原油価格が高い分だけ貿易収支が赤字になっているわけです。
製造業が海外で製品を作るということは、海外に工場を建てるわけですが、そのために必要な費用としてドルを買うわけで、それもドル安円高になりにくい理由のひとつとなっているわけです。
特筆すべき動きとして、今年にはいって急激なドル高円安が進んでいますが、これは米国のインフレによって米国で金融が引き締められ、米国債の金利のほうが日本国債よりもはるかに高い金利なので、投資家たちが米国債を買うためにドルを買ったから、ということに加え、そうした投資家が買うことでドルが上がるだろうと考えた投機家たちもドルを買ったから、ということのようです。
今回は以上です。なお、本稿はわかりやすさを優先していますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。
筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。
塚崎 公義
経済評論家
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】