(※画像はイメージです/PIXTA)

政府は、0歳~2歳児がいる家庭を対象に、「出産準備金」として、ベビー用品や育児サービスに使えるクーポンを10万円分を配布する方針を固めました。1回きりでなく継続的な制度にすることも検討されているとのことです。しかし、「バラマキ」ではないかとの批判がなされています。また、実効性についても疑問が投げかけられています。何が問題なのか、現行の妊娠・出産をサポートする公的制度等も含め、解説します。

出産に関する既存の3つの制度

出産準備金以前に、実は、わが国では、妊娠・出産とその後の一定期間の育児をサポートする公的な給付の制度として以下の3つがあります。

 

1.出産育児一時金

2.出産手当金

3.育児休業給付金

 

それぞれ、どういうものなのか、簡単に振り返っておきます。

 

◆既存の制度1.出産育児一時金

出産育児一時金は、健康保険に加入している本人、または扶養家族が出産した場合に、子ども1人につき、原則として一律42万円が支給される制度です。条件を満たせば誰でも受け取れるものであり、健康保険組合によってはさらに「付加給付金」を受け取れることがあります。

 

支給の条件は「妊娠4ヵ月(85日)以上で出産したこと」です。早産だけでなく、死産、流産、人工妊娠中絶の場合も受け取れます。

 

ただし、出産した医療機関が「産科医療補償制度」に加入していない場合は、支給額が40.8万円となります。「産科医療補償制度」は、分娩に関連して子どもが重度脳性麻痺を発症した場合、医師・医療機関の過失の有無を問わず、子どもと家族の経済的な負担を補償する制度です。

 

出産育児一時金は、医療機関へ申し出を行えば、健康保険組合から医療機関へ直接支払ってもらうことができます(直接支払制度)。これにより、事前に出産費用としてまとまった額を用意しなくてもよいようになっています。

 

なお、直接支払制度を利用した結果、出産費用が42万円未満だった場合は、差額を健康保険組合に請求することができます。

 

◆既存の制度2.出産手当金

2つめは、出産手当金です。これは、労働者が、産前産後に仕事を休んだ場合に、給与の3分の2の額を受け取れる制度です。

 

出産育児一時金とは別に重複して受け取ることができます。また、その間の社会保険料は免除されます。

 

対象となる支給日の範囲は、「出産予定日以前の42日」~「出産日の翌日から56日」です。

 

起算日は「出産予定日」が基準ですが、終期は「出産日」の翌日が基準となっています。それゆえ、出産が予定日より遅れた場合は、その分、出産手当金を受け取れる日数が長くなります。

 

また、出産育児一時金と同様、「妊娠4ヵ月(85日)以上で出産したこと」という条件をみたせば、早産だけでなく、死産、流産、人工妊娠中絶の場合も受け取れます。

 

なお、「給与の3分の2」というのは、厳密には以下のように「標準報酬月額」を基準として日割りで計算します。

 

・標準報酬月額÷30日×3分の2×休業日数

 

標準報酬月額は、残業代等も含め、直近12ヵ月の平均です。また、都道府県ごとの標準報酬月額は協会けんぽHP等で確認することができます。

 

たとえば、直近12ヵ月の平均の報酬月額が35万円の人が90日休業した場合、標準報酬月額は36万円なので、出産手当金の額は、

 

・標準報酬月額36万円÷30日×3分の2×90=72万円

 

となります。

 

出産手当金は、退職した人や退職予定者でも、以下の条件をみたせば受け取ることができます。

 

・退職日まで継続して1年以上健康保険に加入していた

・出産手当金の支給期間内に退職した

 

◆既存の制度3.育児休を取得したら給与の3分の2を受け取れる「育児休業給付金」

それに加え、出産後8週間を経過した後に「育児休業」を取得したら、標準報酬月額の3分の2にあたる「育児休業給付金」を受け取ることができます。この場合も、受給期間中の社会保険料は免除されます。

 

育児休業給付金については、父親が育児休業を取得した場合も受給することができます。

 

ただし、これまで、女性が育児のため勤務先を退職しなければならなかったり、男性の育児休業の取得が困難だったりといった事態が、なかなか改善されてこなかったという実態があり、まだまだ解消には至っていません。

 

育児休業法の改正法が2022年10月に施行され、新たに「育児パパ休」が設けられるなどの改正がなされていますが、その効果は未知数です。

 

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