相続対策として富裕層から人気の不動産投資ですが、場合によっては「逆効果」になることがあると、永田町司法書士事務所の代表司法書士、加陽麻里布氏はいいます。では、具体的に不動産投資が逆効果となるのはどのようなケースか、また不動産投資以外に多い相続対策の失敗例にはどのようなものがあるのか、みていきましょう。

対策が逆効果になることも…相続対策の失敗パターン

今回は富裕層の相続対策が失敗しやすいパターン、トラブルが起きやすい相続の例を、司法書士の立場からいくつかご紹介します。

 

資産圧縮のつもりが…実は効果の薄い「不動産投資」

相続対策が失敗しやすいパターンとして、1つ目は「不動産投資による相続対策」が挙げられます。

 

私の司法書士事務所でも、相続対策でどのようなことをすればいいのか、というご相談をいただきますが、そのなかでも特に多いのが、不動産投資をすることは相続対策になるのか、というご相談です。

 

大前提として、確かに不動産投資は相続対策において有効な手段だといえます。1億円の現金を持っているよりも、1億円の不動産などの金融資産のほうが財産の価値が下げることができるため、結果として相続税を安く抑えられるのです。これに関してはご存知の方も多いかと思います。

 

では、有効な手段であるはずなのに、なぜ「不動産投資による相続対策」は失敗しやすいのでしょうか。ここでは例を挙げて失敗してしまう理由を解説します。

 

●赤字経営の不動産投資

1つ目の例が、「赤字経営の不動産投資」です。

 

相続対策として不動産投資をやりたい、という方は少なくありません。地方の中古物件などは、非常に利回りが高く、このような物件は、純投資としてならば確かに効果的です。

 

しかし、いざ投資を始めてみると、入居者がつかない、予想以上に修繕費がかかる、という状況に陥ってしまうことが多く、結局は家賃を下げていかなければいけない、その結果、キャッシュフローが赤字になり、手放してしまう……ということが少なくありません。

 

このように、相続対策として地方の中古不動産へ投資をしたけれども、財産がただ目減りしただけだった、という話はよく聞きます。また、購入した物件を手放さないにしても、中古不動産は価値の下落が激しく、相続時の財産の圧縮はあまり期待できません。

 

以上の理由から、地方の中古不動産への投資は、純投資としては有効ですが、相続税対策としての効果は薄く、相続対策としては失敗だといえるのです。

 

●新築マンション投資

2つ目が、評価額の高い新築マンションへの投資です。

 

先ほど、中古不動産は価値の下落が激しいので相続対策としての効果は薄い、とお話ししたため、「なら新築不動産であればいいのか」と考えられる方もいるかもしれません。

 

しかし、これもまた、失敗の原因になってしまうのです。

 

相続時に圧縮できる金額は、新築のほうが高いのは事実です。しかし、その不動産の相続税評価額が想像以上に高くなってしまい、結果的に相続人が支払う相続税が高くなってしまった、というケースは後を絶ちません。

 

相続税は現金で支払わなければなりません。そのため、相続税を支払うため、せっかく購入した不動産を手放さなければいけない、という事態に陥ってしまうなど、現金化できる資産をしっかりと残しておかなければ、相続人が資金難になってしまう、といったことも数多くあるのです。

 

現金を時価の高い不動産に変える、というのは、確かに有効な相続対策ではありますが、ただ変えるだけではなく、それに併せて相続税の納税資金を準備するための資産管理会社の設立を検討する、といったことも必要になのです。

 

●海外不動産

3つ目は、近年非常に人気が高まっている海外不動産です。非常に人気がある一方で、2020年の税制改正によって海外不動産では損益通算ができなくなってしまいました。そのため、投資したとしても相続対策としての効果はありません。これを知らずにいると、多くの相続税がかかってしまうので、注意が必要です。

 

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