(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

8月分機械受注(除船電民需)は7月の反動もあり、前月比▲5.8%と3ヵ月ぶりの減少

 

製造業・前月比+10.2%と2ヵ月ぶり増加、非製造業は前月比▲21.4%と2ヵ月ぶり減少

 

3ヵ月移動平均+0.03%だが、5ヵ月連続増加。「持ち直しの動きがみられる」の判断継続

 

7~9月期見通し前期比▲1.8%は9月前月比▲5.2%で達成。前月比+0.5%なら+0.4%増加

 

 

●8月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲5.8%と、2ヵ月ぶりの減少になった。3ヵ月移動平均は前月比+0.03%とぎりぎりだが5ヵ月連続の増加になった。また、機械受注(除船電民需)の前年同月比は+9.7%で17ヵ月連続の増加になった。

 

●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回7月分では、該当なしだった。今回8月分では、製造業の非鉄金属で1件(原子力原動機1件)だった。

 

●8月分製造業の前月比は+10.2%と2ヵ月ぶりの増加になった。8月分の製造業では17業種中、非鉄金属、化学工業など8業種が増加した。一方、パルプ・紙・紙加工品、繊維工業など9業種が減少した。

 

●8月分非製造業(除船電民需)の前月比は▲21.4%と2ヵ月ぶりの減少になった。電力業の大型案件は7月分では該当なしだったが、8月分では1件(火水力原動機)だった。電力業の前月比は+36.1%と2ヵ月ぶりの増加となった。8月分の船舶・電力を含む非製造業全体では前月比▲14.5%と3ヵ月ぶりの減少となった。非製造業12業種中、6業種が増加で6業種が減少となった。電力業、卸売業・小売業などが増加に寄与した。一方、運輸業・郵便業、不動産業などが減少に寄与した。

 

●大型案件は、前回7月分では、全体で3件だった。官公需が2件(地方公務で、その他産業機械1件、その他官公需で、その他産業機械1件)、外需が1件(電子計算機等1件)であった。今回8月分では、全体で3件だった。前述の2件(非鉄金属、電力業)の他、官公需の地方公務で1件(その他産業機械1件)であった。

 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は8月分前月比+4.9%と3ヵ月ぶりの増加となった。前年同月比は▲2.4%と3ヵ月連続の減少になった。

 

●外需は、8月分の前月比が▲18.9%と4ヵ月連続の減少になった。世界経済の先行きの弱さが反映されている感がある。前年同月比は▲3.3%で6ヵ月ぶりの減少になった。

 

●内閣府の基調判断の推移をみると、21年8月分・9月分・10月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」であった。11月分では「持ち直しの動きがみられる」に、さらに12月分では「持ち直している」に上方修正され、22年1月分では判断据え置きとなっていた。しかし、2月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が下方修正され、3月分でも前月比は増加に転じたものの、3ヵ月移動平均の前月比が減少であることなどから、判断据え置きになった。4月分では、「持ち直しの動きがみられる」へと4ヵ月ぶりに上方修正された。5月分・6月分・7月分・今回8月分と、「持ち直しの動きがみられる」の判断が継続となった。

 

●機械受注(除船電民需)7~9月期の前期比見通しは▲1.8%である。9月分の前月比が▲5.2%の減少で、7~9月期の前期比見通しは達成される。9月分の前月比が0.0%と横ばいなら、7~9月期の前期比は▲0.1%の微減になる。9月分の前月比が+0.5%の増加なら、7~9月期の前期比は+0.4%の増加になる。

 

●7~9月期の前期比実績は09年(平成21年)から21年までの13年間でみると、上振れ10回、下振れ3回であり、上振れしやすい傾向がある四半期である。また、22年(令和4年)7~9月期の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率99.3%をかけたものであり、見通しの算出に使った達成率が100%より若干低いこともある。先行き不透明な環境は設備投資に厳しいものではあるが、GX投資、DX投資などの今やるべき投資もあり、今年も実績が上振れる可能性が大きいと思われる。

 

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・現状判断DIは、22年1月33.3(回答した景気ウォッチャー・3人)、2月64.3(同7人)、3月43.8(同8人)、4月37.5(同4人)、5月37.5(同6人)、6月28.6(同7人)、7月42.9(同7人)、8月46.9(同8人)、9月43.8(同4人)と推移している。9月では「少し風向きが変わり、引き合いは8月より多くなって活気が出てきた。設備投資に少し前向きになってきたようである。ただし、相変わらず自動車関連の会社は良くない。(東海:その他非製造業[ソフト開発]〔経営者〕)」というコメントがあった。

 

 

●一方、設備投資関連・先行き判断DIは22年1月37.5(回答した景気ウォッチャー・8人)、2月は66.7(同3人)、3月は37.5(同6人)、4月25.0(同2人)、5月43.8(同8人)、6月50.0(同6人)、7月50.0(同3人)、8月60.7(同7人)、9月55.6(同9人)と推移している。9月では「新たな設備投資を実施予定で、3ヵ月後には稼働を始めるので、売上増の予定である。(北関東:一般機械器具製造業〔経営者〕)」というコメントがあった。

 

●日本工作機械工業会によると、22年8月分確報値の工作機械の国内向け受注額の前年同月比は+16.2%と、21年3月分+18.2%、4月分+70.6%、5月分+82.6%、6月分+91.1%、7月分+82.9%、8月分+93.2%、9月分+90.2%、10月分+74.1%、11月分+84.9%、12月分+60.8%、22年1月分+67.3%、2月分+60.4%、3月分+48.8%、4月分+47.5%、5月分+48.9%、6月分+31.3%、7月分+14.5%に続き、前年同月比・伸び率は一時期よりは鈍化したものの18ヵ月連続の増加になった。

 

●機械受注統計での民需からの工作機械受注も前年同月比2ケタ増加の動きになっている。22年8月分の前年同月比+9.7%と一ケタに鈍化したものの、21年3月分+17.0%、4月分+71.4%、5月分+85.6%、6月分+77.2%、7月分+84.8%、8月分+91.4%、9月分+80.1%、10月分+63.5%、11月分+90.7%、12月分前年同月比+67.8%、22年1月分前年同月比+59.4%、2月分+55.6%、3月+44.4%、4月+39.4%、5月分+46.5%、6月分+21.8%、7月分+10.4%に続き、18ヵ月連続の増加である。

 

 

 

(2022年10月12日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年8月分「機械受注」のデータ』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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