(※画像はイメージです/PIXTA)

学習障害、ADHDという言葉が近年急速に広まり、その数は増加傾向にあるといわれています。「学習障害」の診断書を求めて専門病院は予約が何ヵ月も先まで埋まっているという医療従事者の声もしばしば聞かれます。なぜそれほどまでに増加傾向にあるのか紐解きます。

「通級」を申請するのに、医師の診断書は不要

お察しの通り、「通級」に通っている子どもの数と学習障害児の数は必ずしも一致しません。「通級」に通うにはまず、保護者が入級申込書に記入のうえ在籍校に提出し、面談、体験入級、行動観察等を経て、審議会によって入級するのが子どもにとってよいと判断されてから入級にいたります。

 

つまり、医師の診断は関係なく、保護者や本人の意向が色濃く反映されます。さらに、「通級」への申し込みには、医師の診断書は必須ではありません。文部科学省は審議会による総合的判断の1項目に「専門家の意見」の必要を定めていますが(『学校教育施行令』より)診断書の提出を必須事項とはしていません。

 

すなわち、医師の診断がなくても「通級」に通う場合もあれば、診断があっても通わない場合もあるわけです。

 

医師の診断を受けたうえで「通級」を選択しないケースには、例えば、保護者が学習障害の診断がある旨を子ども自身に伝える意向がないなどがあります。

 

「自尊心を傷つけたくない」「障害ではなく個性として捉えて育って欲しい」という考えや、子どもの学習障害の診断を得る過程で、親自身も同じ障害であることが発覚し、受け入れ向き合うことが困難になってしまうなど、さまざまな事由があります。

 

逆に医師の診断がなくても、通常のクラスのみの世界では、どこか生きづらさを感じてしまったり、勉強についていけないなどの不都合を憂いていれば、入級することも可能であるということです。

 

また、医師が作成する診断書に関して診断基準が定められていないという現状があります。下記は、法務省ウェブサイトに掲載されている、文部科学大臣による答申書です。

 

事件名:学習障害児の医師の診断書及び意見書の不開示決定(不存在)に関する件学習障害の医学診断基準が記載されている文書の不開示決定(不存在)に関する件

 

※下記、内容の一部抜粋

 

学習障害という用語が法令上規定されてからも,そこには医学的診断基準はおろか学習障害の定義も規定されておらず,このため,当然に ,法令関係の文書では,審査請求人が開示を求める「学習障害の医学診断基準が記載されている文書」は作成されていない。また, 法令以外の文書では,学習障害という用語が法令上規定される以前に学習障害の定義を記載した文書は存在するものの,そこに医学的診断基準は記載されていない。

 

上記から、学習障害に関して医学的診断基準は設けられておらず、また定義そのものも規定されていないということが分かります。

 

診断基準や定義が曖昧だからこそ、その判断が医師や教員、保護者の個人的な裁量に依拠され、「学習障害」という言葉の一般化が進行すればするほど、増加しつづけているといえます。

 

重要なのは、その診断基準や定義が曖昧であることで、発達障害児が抱える苦しみが増幅してしまいう点です。大人によって「障害」と「健常」の間を右往左往させられ、社会での曖昧な立ち位置に苦しみを抱えてしまいます。

 

今後わたしたちが関心を持ちつづけることで法整備が洗練され、すべての発達障害児が自分らしく生きられる社会がおとずれること願ってやみません。

 

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