2025年、団塊の世代は「後期高齢者」に
日本の高度成長を支えてきた団塊の世代。しかし、2025年には多くが後期高齢者になり社会保障費が増大することから、「2025年問題」として危機感を持たれている。
団塊の世代とは、終戦後、1947年~1949年に生まれた世代を指す。じつはその範囲は一定しておらず、1951年生まれまでを含む場合もある。
2022年、団塊の世代の年齢は71歳~75歳。人数が多いがゆえに、さまざまな社会問題とセットにして語られてきたが、若い人たちはこの世代の足跡を追うことで、将来への備えが見えてくるかもしれない。
団塊の世代の大卒の初任給(1970~1974年)は、平均4万~8万円で、現在の価値換算で14万~16万円程度。2022年4月大学卒21万6000円程度だから、この50年で大卒初任給は上昇している。
★団塊の世代:大卒時平均初任給
1970年(昭和45年)39,900円
1971年(昭和46年)46,400円
1972年(昭和47年)52,700円
1973年(昭和48年)62,300円
1974年(昭和49年)78,700円
出所:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』より推計
団塊の世代は、バブル景気を謳歌した世代でもある。毎晩のように繁華街で飲み歩き、なかなか止まらないタクシーをタクシーチケットをヒラヒラさせて呼び止めるなど、いまではむしろ滑稽なエピソードとして語り継がれている。
日経平均株価が3万8957円の史上最高値を記録した1989年、元号が昭和から平成に変わった年の会社員の平均給与は402万4000円と、初めて400万円を突破。翌年の1990年には、湾岸危機や公定歩合の急激な引き上げ等により、日経平均は同年10月、一時2万円割れにまで暴落したが、それでも会社員の平均給与は1992年まで上昇し、1993年には455万5000円となった。1993年には前年を割ったものの、1997年には467万3000円にまで上昇した。
団塊の世代が50代に突入したのはちょうどそのころだ。子どもも成長し、住宅ローンの終わりも見えてきた。団塊の世代が60歳となり、定年を迎えるのは2007年から2011年あたりだが、その時期、会社員の平均年収の前年割れが続き、2009年には405万9000円と、400万円割れ直前まで落ち込むことになる。
団塊の世代が50代に思い描いていた老後とは?
毎年給与が上がり、バブル景気を謳歌した団塊の世代だが、老後の資産形成に取り組む段になったとき、時代は「戦後初めて給与が減る」状況となった。
団塊の世代を含む全国の中高年者世代の男女を追跡調査している、厚生労働省『中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)』の第1回調査(2005年実施、団塊の世代54~58歳)によると、男性の92.8%が収入となる仕事をし、55.3%が「正規の職員・従業員」として、20.0%が「自営業主」として、7.3%が「会社・団体等の役員」として働いていた。
「ひとつの企業・団体等の組織に概ね20年以上勤務している/または勤務していた」が30.1%、「勤め先は変わったが、同じ分野の仕事におおむね20年以上従事している/またはしていた」が16.8%と、長期にわたって職場を変わることなく、同じ仕事に従事してきたことが見て取れる。
そんな50代を過ごした団塊の世代が思い描いていた「60歳以降の生活」とはどのようなものだったのか。
60歳定年直後は「仕事を続ける=仕事で収入を得る」と考えていた人が7割弱。一方、65歳以降は「公的年金」に頼るだろうという人が7割弱と逆転。また定年直後は「退職金」が生活費の大きな支えになる一方で、定年後の生活に「預貯金」は欠かせないという認識だったことがわかる。
★Q.50代に聞いた「60歳以降の生活のまかない方」
■60~64歳
仕事での収入(66.9%)
公的年金(32.1%)
預貯金の取り崩し(22.9%)
退職金(21.5%)
私的年金(12.9%)
■65~69歳
仕事での収入(30.2%)
公的年金(69.5%)
預貯金の取り崩し(23.9%)
退職金(12.3%)
私的年金(16.9%)
■70歳以降
仕事での収入(19.7%)
公的年金(71.9%)
預貯金の取り崩し(25.0%)
退職金(9.8%)
私的年金(16.0%)
出所:厚生労働省『第1回 中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)』より
※複数回答
団塊世代の老後生活、予想と現実の乖離
主に年金に頼りながら暮らすという、誰もが思い描く老後を思い描いていた団塊の世代の人々。第16回の追跡調査ではどのような結果となったか。
この15年間、「正規の職員・従業員」の割合は減少。「パート・アルバイト」の割合はほぼ横ばいだ。「正規の職員・従業員」は、第1回時では38.5%だったが、第16回では3.5%と減少。一方、「パート・アルバイト」は、16.8%から15.6%と、ほぼ横ばいの状況となっている(図表2)。
また、第1回で「仕事をしている」者について、性別ごとに見ると、男性の「(第1回)正規の職員・従業員」では「仕事をしていない」の53.1%が最も高く、次いで「パート・アルバイト」の16.2%、「労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託」の11.4%となっている。女性の「(第1回)パート・アルバイト」では「仕事をしていない」の60.3%が最も高く、次いで「パート・アルバイト」の32.4%となっている(図表3)。
65歳以上の就業状況 第1回調査時に「65歳以降仕事をしたい」と答えた人で、第16回調査時に「仕事をしている」のは、男性の「65~69歳」で6割以上、「70~74歳」で5割以上。女性の「65~69歳」で5割以上、「70~74歳」で4割以上。第1回調査時(50~59歳)に「65歳以降仕事をしたい」と答えた人たちについて、性別、年齢階級別に第16回調査で「仕事をしている」者の割合をみると、男性の「65~69歳」で67.4%、「70~74歳」で52.6%、女性の「65~69歳」で53.3%、「70~74歳」で41.2%で、いずれも男性の方が高い結果となった。
これらの結果から「就労意欲が高い高齢者が多い」と思うだろうか? 厚生労働省『令和2年度 厚生年金・国民年金事業の概況』によると、70歳で手にする平均年金額(厚生年金保険第1号の場合)は14万6145円。後期高齢者となる団塊の世代の人たちが、身をもって示してくれているのかもしれない。
現役世代は、なるべく早い段階で資産形成を始めることが、何より重要だ。
幻冬舎ゴールドオンライン編集部
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