従来のプロバイダ責任制限法の問題点と改正法のポイント
従来の規定の問題点は、以下の2つです。
・手続が2段構えになっていて手間と費用がかかる
・SNS等のログイン型サービスでは投稿時ではなくログイン時のIPアドレス情報を取得する必要がある
2022年の法改正は、これらの問題点を解決し、被害者がより救済を受けやすいようにするためのものです。
改正点1.被害者による加害者情報の開示請求の手続の簡易化・迅速化
第一に、従来の規定では、手続が2段構えになっていて手間と費用がかかります。特に、通信事業者に対して訴訟を起こさなければならないというのはハードルが高く、被害者が泣き寝入りを強いられるおそれがあります。
しかも、SNS等は拡散力がきわめて高いため、風評被害等も深刻なものになるおそれがあります。
この問題に対し、改正法は、新たに「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」を創設しました。すなわち、被害者は裁判所にコンテンツプロバイダに対する「開示命令の申立て」を行い、その手続のなかで、コンテンツプロバイダに対し、通信事業者の名称等の開示を命じることができるようになりました。
被害者はそれをもとに通信事業者に対する「開示命令の申立て」を行うことができます。その場合、コンテンツプロバイダに対する「開示命令の申立て」と一体として審理されることになりました(【図表】参照)。
しかも、この「裁判手続」は「非訟手続」といって、被害者の手間や費用は「訴訟」よりも大幅に軽減されています。
改正点2.SNS等のログイン型サービスの出現への対応
第二に、法律制定後、SNS等のログイン型のサービスが出現し、広く利用されるようになりました。
SNS等の場合、ログイン時のIPアドレスは記録されますが、投稿時のIPアドレスが記録されていないことが多いので、開示対象と認められないことがあります。
そこで、一定の要件のもと、ログイン時のIPアドレスを開示の対象とする旨を明記しました。
このように、2022年10月1日施行のプロバイダ責任制限法の改正は、インターネット上の誹謗中傷等の被害者による加害者の特定を容易にし、損害賠償請求等の対抗措置をとることを可能にするものといえます。
ネガティブな情報が直ちに拡散し、誰でも名誉棄損、プライバシー侵害、風評被害にみまわれるリスクがある今日において、この法改正は、あらゆる個人、事業者、企業等にとって重要な役割を担うものといえそうです。
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