(写真はイメージです/PIXTA)

一定期間、遺産分割を禁止することを生前に決めておけるのでしょうか? 万が一の際には、孫が成人するまで遺産分割を止めたいという社長の事例とともに、岡野相続税理士法人の代表社員、岡野雄志税理士が解説します。

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    「遺産分割を禁止」された相続人…どう対処する?

    被相続人が遺言書を残している場合、その遺言内容が遺産分割協議よりも優先されます。相続人全員が合意すれば、遺言内容と異なる遺産分割も可能ですが、「遺産分割禁止」の場合はそうはいきません。遺言書に「遺産分割禁止」が記載されていれば、それに従うしかないのです。

     

    遺産分割を禁止されても、相続税の申告・納税期限は変わりません。相続開始から10ヵ月以内です。期限を過ぎれば、延滞税や加算税が付加される可能性があります。

     

    相続人は法定相続分で遺産分割したと仮定して、相続税の仮申告と納税をします。相続税の仮申告時に申告期限3年以内の分割見込書を提出すれば、遺産分割完了時に以下の特例なども適用できます。

     

    ・配偶者控除

    ・小規模宅地等の特例

    ・特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例

    ・特定事業用財産についての相続税の課税価格の計算の特例

     

    また、申告期限3年以内に遺産分割が決着しない場合は、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヵ月以内に、税務署へ『遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書』を提出し承認されれば、分割期限の延長が可能です。

     

    仮申告時に申告期限3年以内の分割見込書を提出し、特例の適用申請をすれば、遺産分割完了時に特例適用も可能です。禁止期限が来て遺産分割協議が整ったら、遺産分割完了日の翌日から4ヵ月以内に相続税の「修正申告」や「更正の請求」を行います。

     

    遺産分割協議による相続配分に従い、仮申告で税額が不足していた相続人は「修正申告」、税額が過大だった相続人は「更正の請求」を行います。遺産分割の禁止は、今回の例のようにケースによっては有効です。

     

    しかし、相続人に手続きの負担をかける可能性もあり、実行前には専門家へ相談するなど、慎重に検討すべきでしょう。

     

     

    岡野雄志

    岡野相続税理士法人

     

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