あなたにオススメのセミナー
遺言書によって遺産分割を禁止することはできるのか?
結論から申しましょう。法定どおり作成された遺言書による「遺産分割の禁止」は可能です。
今回の例でいえば、お孫さんは現在15歳、現行の法律で成年年齢は18歳と定められていますから、3年間「遺産分割を禁止」すれば、お孫さんが成人するまで遺産分割を止められます。
「家業である工場を継続して営業するため、遺言者が有する工場の土地・家屋・設備について、相続開始後3年間、遺産分割を禁止する」という旨と、その所在地・規模等を遺言書に記します。遺言で遺産分割を禁止する場合、禁止期間は相続開始から5年以内と定められています。
民法第908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
もちろん、未成年者が相続する方法はあります。未成年者が法律行為を行う際には法定代理人を立てる必要があり、相続も法律行為ですから代理人(特別代理人)を立てます。しかし、この手続きはかなり煩雑です。第三者が入ることで、他の相続人と揉め事になる場合もあります。
今回の例のように、相続人に未成年者がいる場合のほかにも、遺産分割の禁止が有効なケースがあります。相続財産や相続人について時間をかけて詳しく調査する必要がある場合、相続人同士で「争族」になることが予想されるため、冷却期間を置く必要がある場合などです。
また、遺言による遺産分割禁止のほかにも、相続人による禁止、家庭裁判所による禁止があります。前者は相続人全員の合意によるもので、後者は家庭裁判所が直ちに遺産分割すべきではない特別の事由があると判断した場合です。
なお、遺言による遺産分割禁止は5年以内と定めがありますが、相続人および家庭裁判所による禁止には期間の規定がありませんでした。そこで、2021年の民法改正で下記内容のように、第908条第2・3項を追記、第907条第3項を第908条第4・5項に変えることになりました。
共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部または一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。また、この契約は、5年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、いずれの場合も、遺産分割禁止期間の終期は相続開始後10年を超えることができない。
家庭裁判所が遺産分割禁止の審判をする際には、5年を超えない期間を定めなければならず、更新審判についても、5年を超えない期間を定めなければならない。また、相続人による禁止期間同様、終期は相続開始後10年を超えることができない。
なお、改正民法の施行日は、2023年4月1日とされています。
では、遺産分割を禁止された相続人はどう対処すればいいのでしょう? また、この場合の相続税の申告・納付はどうなるのでしょうか?
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>