●先物市場のFF金利予想水準について6月14日、7月28日、8月10日、26日の各時点を比較。
●7月まで、利上げは短期間との見方で予想水準は低下、8月は上方修正も株高はしばらく続いた。
●先物市場で来年の利下げ予想は継続中、来月ドットチャート上方修正なら、予想の変化に注目。
先物市場のFF金利予想水準について6月14日、7月28日、8月10日、26日の各時点を比較
今回のレポートでは、先物市場が織り込むフェデラルファンド(FF)金利水準の予想について、ここ数ヵ月でどのように変化したか、確認していきます。具体的には、4つの時点を設定し、各時点の取引終了時点におけるFF金利先物価格から、将来のFF金利の予想水準を算出し、その変化を比較します。なお、4つの時点は、①6月14日、②7月28日、③8月10日、④8月26日としました。
①は、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の大幅利上げを決定した前日です。②は、7月のFOMCで、同じく75bpの利上げを決定した翌日です。③は、7月米雇用統計発表(8月5日)を終えた後、7月米消費者物価指数の発表当日です。④は、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演した日です。
7月まで、利上げは短期間との見方で予想水準は低下、8月は上方修正も株高はしばらく続いた
まず、①において、FF金利は2022年12月が3.55%で、利上げのピークは2023年5月の4.06%、2023年12月は3.76%という予想でした(図表1)。
次に、②をみると、2022年12月は3.22%で、利上げのピークは2023年1月と2月の3.26%、2023年12月は2.72%との予想です。つまり、先物市場は6月と7月の2度の大幅利上げを経て、利上げは短期間で終了し、来年早々には緩和が可能との見方を強めたと推測されます。
なお、①から②の期間、ダウ工業株30種平均は7.1%上昇しました。次に、③を確認すると、FF金利は2022年12月が3.43%で、利上げのピークは2023年4月の3.60%、2023年12月は3.15%という予想となりました。③は、雇用の底堅さとインフレのピークアウトの兆しが確認された時点でしたが、②よりもFF金利の予想水準は全体的に上昇しました。ただ、それでもダウ工業株30種平均は、②から③の期間、2.4%上昇しました。
先物市場で来年の利下げ予想は継続中、来月ドットチャート上方修正なら、予想の変化に注目
最後に④をみると、FF金利は2022年12月が3.56%で、利上げのピークは2023年4月の3.80%、2023年12月は3.49%という予想でした。パウエル議長の講演後、予想水準は③からさらに上昇し、2022年12月は、①の予想水準に戻りました。ただ、2023年以降は、①の予想水準に届いておらず、依然として2023年は利下げが見込まれています。なお、ダウ工業株30種平均は、③から④の期間、3.1%下落しました。
改めて、FOMCメンバーが適切と考えるFF金利水準の分布(ドットチャート)をみると、中央値で2022年末が3.375%、2023年末が3.75%で、2023年は利上げ継続という見方です(図表2)。
最近のFOMCメンバーの発言を踏まえると、9月のFOMCでは、分布が上方修正されることも想定されます。実際にそうなった場合、FF金利先物市場の反応、とりわけ2023年の利下げ予想が消滅するか否かが注目されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『先物市場が織り込む「FF金利予想水準」の変化について【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト