ブータンの財源を大きく占めるインドへの電力輸出
ブータンのインド向け電力輸出の管理は、様々な電力販売契約(PPA)を通じて行われている。
政府間で建設された発電所は、原価加算法に基づいて定められた関税と両政府間で締結された長期PPAによって輸出されており、インドへの輸入は、インド政府が指定したインド企業によって行われる。
8月10日、越境エネルギー貿易セミナー「南アジアシンクタンクフォーラム」での報告において、インスティチュート・オブ・ハピネス研究所の水力発電専門家であるドルジ・パヴォ・プンショク氏による報告書「2022年の越境電力貿易におけるブータンの豊かな経験」が発表された。そこで同氏は、「インドはブータンと水力発電開発で協力し、利益を得ている」と述べている。
タラ水力発電プロジェクト以降の両政府間の協定には、プナツァンチュ協定(ブータンにある川名。プナツァンチュ水力発電所も存在する)と同様の条項を含んでおり、また以下のように再定義されている。
「ブータンがブータン・インド国境でインドに販売する電力料金は、プロジェクトの試運転時に両政府が相互に決定するものとする。これは、プロジェクトの費用、財政費用、運転費用、メンテナンス費用、インドの類似プロジェクトに適用される減価償却費、一般的な市場環境を考慮して行われるものとする」
また、「タラ水力発電プロジェクトで合意された原則に基づいて、予測性を高めるために電力料金は3年ごとに両政府によって見直されるものとする」とも規定されている。
プンショク氏の報告書によれば、関税の決定や電力販売契約の最終決定には、プロジェクトの完成費用、財政費用、インドの類似プロジェクトに適用される減価償却率、運転費用、メンテナンス費用、15%のエネルギー使用料などを含む、多くの要素が考慮されるとのことである。
プンショク氏は、「関税のしくみは15年間は安定していたが、両政府は電力販売契約の残りの年数の料金について相互に議論し、見直すことになっている」と述べた。
また、現行の関税制度では、請求書の提示から10日以内に支払いが行われた場合、月々の請求額に対して2%の払い戻しを行うことになっている。
インド以外の国への電力輸出
ブータン内におけるエネルギーは、インド以外への輸出も可能である。
電力に関するSAARC(南アジア地域協力連合)エネルギー協力協定によると、「加盟国は、それぞれの加盟国の法律、規則、規制に従い、二国間、三国間、あるいは多国間の相互協定に基づいて、任意に国境を越えた電力の取引が可能となる」と規定されている。
しかし報告書には、「この規定ではSAARC内の電力の多国間取引はほとんど促進されない」と書かれている。
一方、ブータンとインドは、電力貿易において価値のある様々な経験を積んできた。
2021年末時点で、ブータンは総発電量155,925.81GWh(ギガワット時)のうち117,715.31GWhをインドに輸出している。インドへの輸出量は、発電量の75.5%を占めている。
電力輸出は、インド向け輸出総量において最低だった1996年の23.2%から、2020年には最高で63.3%を占めた。
水力発電は、社会的・商業的・産業的なニーズに応える重要なエネルギー源であると同時に、インドルピー(INR)建ての多額の収益をもたらしている。このため電力は、ブータンの国内総生産(GDP)に大きく貢献している項目の1つである。
1993年にはGDPのわずか8%だった電力は、2007年には20.4%にまで構成比を高め、2007年以降は2ケタ台で推移している。そしてブータンのインドへの電力輸出額は、2019年に398億900万ニュルタム、2020年に435億1,340万ニュルタムにも上った。