相続人申告登記の新設
相続登記が義務化されますが、もしも遺産分割協議で揉めてしまい、不動産の相続先が決まらない場合には、どうすればよいのでしょう。そんな場合を想定して、「相続人申告登記」というものができます。
たとえば、父が亡くなり、法定相続人である子3人が、誰が自宅を相続するかで揉めてしまったとします。2年近く経っても決まらず、3年以内の相続登記はむずかしい状況です。
そのような事態のとき、「まだ正式な相続登記はできませんが、私は父の土地・建物の相続人の1人です」と申告すれば、相続登記の義務を果たしたとみなされます。この登記を、「相続人申告登記」といいます。
これを相続を知った日から3年以内にすると、相続登記義務をクリアしたことになります。相続人申告登記では、相続人の住所・氏名が登記されますが、持分は登記されません。
その後遺産分割協議が成立して誰がこの土地・建物を相続するかが決まった場合は、その決まった日から3年以内にきちんと相続登記をする義務があります。
相続人申告登記
相続開始後3年以内に遺産分割協議が成立しない場合、とりいそぎ相続人である旨を法務局へ申告すれば、相続登記の義務を果たしたことになる。
→その後遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議の成立の日から3年以内に相続登記をする義務を有する。
想いをつなげる生前対策
親世代の方へ
遺言のすすめ
自分が一生懸命築いてきた大切な財産。自分の親から引き継いで守ってきた大切な財産。その財産のことで子どもたちが揉めてしまうのを避けるためにも、自分の財産の行き先を遺言できちんと指定しておきましょう。
遺言があれば、残された相続人たちは遺言した人の遺志を尊重し想いをつないでいくことができます。遺言がなければ相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
揉めてしまった人たちは、亡くなった人の遺志や想いはまったくといっていいほど考慮せず、自分が何を相続するか、他の相続人が何を相続するのか、それは自分と比べて多いのか少ないのか、ということばかり考えているように感じます。
揉めてしまうと「相続は亡くなった人が大切に築いてきた財産を引き継ぐのだ」ということさえも忘れてしまっているようです。無用な相続争いを避けるためにも、生前に、財産の最終的な行き先を指定してください。
「じょうずな遺言」を残すためのお勧めは公正証書遺言で、すべての財産について遺言し、遺産を多く渡したい人がいればその理由も明確にし、気持ちを伝え、遺留分に配慮し、予備的遺言もしておくことです。
自分が苦労して築いてきた大切な財産を引き継いでもらうのです。きちんと行き先を指定しておきましょう。
家族信託のすすめ
人生100年時代。しかし人は老いていきます。もし、急に夫が倒れたら……。妻が認知症になってしまったら……。自分たちが老後のためにと思って貯めてきたお金が預金凍結されて使えない状態になるかもしれません。
「歳は取ったけれど、まだ大丈夫」と思っている今が考え時です。病気になったり認知症の予備軍になったりしたら、しっかり考えることもできません。「まだ大丈夫」な今からしっかり考え、行動に移しましょう。
財産の棚卸しをして、夫婦で今後どうしたいのかを話し合い、子どもたちの気持ちも聞いてみましょう。そうして認知症対策をしたい、先祖代々の財産を守ってもらいたい、1棟のアパートを子ども3人に平等に相続させたいなどと思ったら、家族信託を選択肢に入れましょう。