(※写真はイメージです/PIXTA)

脂肪肝というと、少し前まではお酒が好きな人の病気と思われていました。しかし、お酒を飲まないからといって油断はできません。アルコールを原因としない脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝炎/NAFLD)もあり、放置すれば肝炎→肝硬変→肝がんへと進行していく恐れがあるからです。脂肪肝の予防・早期発見のために知っておきたい「食生活のポイント」を見ていきましょう。みなと芝クリニック院長・川本徹医師が解説します。

ジュースや果物…この飲み物・食べ物は摂っていい?

「甘い液体」は特に脂肪肝に直結しやすい

その他に特に脂肪肝に直結しやすいのはジュースや清涼飲料水、缶コーヒーなどの甘い液体で糖質を摂り過ぎてしまうことです。噛むことも分解も必要なく、すぐに吸収されやすいので太るリスクが高くなります。商品の成分表に「果糖ぶどう糖液糖」や「ぶどう糖果糖液糖」と記載のあるものは、摂り過ぎないようにしましょう。

 

これは摂っていいのかとよく聞かれる飲み物・食べ物について考え方や摂り方のポイントをまとめました。参考にしてください。

 

■清涼飲料水…「500mLのジュースを1日1本」だけで糖質オーバー

アルコールは一切飲まないけれど、ジュースなどの果糖飲料をよく飲んでいるという方は、脂肪肝の可能性大です。ある観察研究において果糖を含む清涼飲料水を毎日摂取することでNAFLD*患者の肝線維化がより進行することが示されています(NAFLD…日常的にアルコール摂取がない、あるいは少ない人にみられる脂肪肝)。

 

たとえばコーラ500mLには砂糖が56.5g、これはお茶碗一人前の糖質量と同程度です。オレンジジュース500mLには55g、缶コーヒーには16g(190mL中)。1日の砂糖の摂取量は25g/日が目安といわれていますので、ジュース500mLを1本飲めば、軽く超えてしまいます。せっかく食事で糖質をコントロールしても、努力が水の泡となってしまいます。

 

その他糖質ゼロの甘味料や低カロリー飲料は、カロリーは低くても、インスリン分泌を促すという報告もあります。総じて、甘い飲み物の摂り過ぎは避けたほうが良いでしょう。

 

■フルーツ…ヘルシーだけど果糖たっぷり。食べるなら「朝」がおすすめ

フルーツは、食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富なヘルシー食材ではあるのですが、果糖がたっぷり含まれています。果糖単体では、血中インスリンを上昇させる作用が小さいといわれていますが、糖質であることには違いなく、砂糖と同じだけのエネルギー量があります。食べ過ぎれば、体重や中性脂肪が増えていきます。フルーツを食べるなら朝にしてエネルギー消費量が減る夜にたくさん食べるのは控えましょう。

 

■コーヒー…肝臓病の進行を防ぐかもしれない?

以前からコーヒーの摂取は、糖尿病などの生活習慣病のリスクを低下させることが知られていました。

 

国立がん研究センターの研究において、「コーヒーを摂取する群において、全死亡リスクおよび心疾患、脳血管疾患および呼吸器疾患による死亡リスクが減少した」「1日3~4杯飲むグループの死亡リスクが最も低くなっていた」と報告しています。

 

またコーヒーをほとんど飲まない人と比べ、ほぼ毎日飲む人では、肝がんの発生率が約半分に減少し、1日5杯以上飲む人では、肝がんの発生率は4分の1にまで低下していたとの報告もあります。ただしコーヒーを多飲することが肝がんの発生率の低下に直結するかどうかは、さらなる研究によって確認が必要です。

 

コーヒーと脂肪肝の研究ではどうかというと、いくつかの研究で、コーヒーの摂取は肝線維化の進行を抑制するとの報告があります。仕組みとしてはコーヒーに含まれるカフェインの肝保護効果や、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸の血糖値改善効果や抗炎症作用が、何らかの理由で肝線維化の抑制に寄与しているのかもしれません。


 

 

川本 徹

みなと芝クリニック 院長

 

 

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※本連載は、川本徹氏の著書『死肪肝』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

死肪肝

死肪肝

川本 徹

幻冬舎メディアコンサルティング

沈黙の臓器、肝臓。 「気付いたときにはすでに手遅れ」を防ぐために――。 臨床と消化器がんを研究し、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでがん治療の最先端研究に携わった著者が、脂肪肝の基礎知識とともに肝…

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