あとで食べると「血糖値の上昇が穏やかになる」ワケ
臨床的な研究によると、炭水化物をあとで食べるほうが、胃の内容物がその先へ排出される時間が長くなることが証明されています。
炭水化物は、そのままの形では吸収されません。消化酵素によって小さい化合物に分解されますが、胃ではまだ吸収されず、小腸で吸収され血中に入ります。
従って、胃から小腸に排出される時間が長くなれば、炭水化物を吸収する時間もより遅く、より長くなるわけです。また、炭水化物をあとで食べるほうが、インクレチンと呼ばれる物質の血中濃度も、食後に、より高く上昇することも示されました。
インクレチンは、比較的最近発見・同定されたホルモンですが、これには食事摂取後の胃からの排出を妨げる働きと、膵臓(すいぞう)からのインシュリン排出を促進する働きなどがあります。
さらに、インクレチン関連の糖尿病の新薬が最近開発され、現在広く糖尿病の患者に使われています。それは、DPP-4阻害薬と呼ばれる薬ですが、インクレチンの働きを強める効果があり、今までの糖尿病の薬と比べると、低血糖などの副作用が少ないと言われています。
炭水化物を食事の最後に食べるだけで、自前で新薬と同様のメカニズムを持つインクレチンを増やし、糖尿病や血管障害のリスクを下げているとしたら……とても得をしているように思いませんか。
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近藤 靖子
和歌山県和歌山市に生まれる。京都大学医学部および同大学院卒。 医療に関しては麻酔科、眼科、内科、神経内科、老年内科の診療に従事。1994年家族と共に渡米し、オハイオ州クリーブランドのクリーブランドクリニックにて医学研究を行う。 その後、ニューヨーク州ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学、テキサス州ヒューストンのMDアンダーソンがんセンターにて医学研究に従事。 2006年末に帰国し、2008年千葉県佐倉市にさくらホームクリニックを夫と共に開院し、主に高齢者医療を行う。