●自民党は単独で改選定数の過半数を獲得し大勝、与党としても改選議席を上回る議席を獲得。
●衆議院解散がなければ今後3年間は国政選挙がなく、岸田内閣は長期政権となる公算が大きい。
●選挙結果は想定内、株式市場は経済対策第2弾などを見極めつつ、将来の財政健全化も注視。
自民党は単独で改選定数の過半数を獲得し大勝、与党としても改選議席を上回る議席を獲得
第26回参議院議員通常選挙は7月10日に投開票が行われました。参院議員の任期は6年で、3年ごとに選挙が実施され、半数ずつ改選されます。今回、参院の総定数は3増えて248になり(過半数は125議席)、改選定数は、選挙区74、比例50の計124です。選挙では、選挙区367人、比例代表178人の計545人の立候補者が、神奈川選挙区の非改選の補充1を含めた125議席を争いました。
投開票の結果(7月11日午前7時時点)、自由民主党(以下、自民党)が63議席(選挙区45議席、比例代表18議席)と、単独で改選定数の過半数を獲得し、大勝しました(図表1)。
また、公明党とあわせた与党の獲得議席は、改選69議席を上回る76議席となり、岸田文雄首相(自民党総裁)が勝敗ラインとして掲げた「非改選を含めて与党で過半数」(非改選70議席のため改選55議席で過半数)を大幅に超えました。
衆議院解散がなければ今後3年間は国政選挙がなく、岸田内閣は長期政権となる公算が大きい
一方、立憲民主党は改選23議席を大きく下回る17議席の獲得、国民民主党も改選7議席を下回る5議席の獲得となりました。これに対し、日本維新の会は改選6議席から倍増の12議席を獲得しました。また、与党2党と日本維新の会および国民民主党など、改憲論議に前向きな「改憲勢力」は、選挙前と同様、国会発議に必要な3分の2の166議席を維持しました。
参院選に勝利した岸田首相は、来月以降、内閣改造を行い、党役員人事を固めて政策課題に取り組む見通しです(図表2)。
なお、自民党総裁の任期満了は2024年9月、参議院の次回改選は2025年7月、衆議院議員の任期満了は2025年10月となっています。岸田首相が自民党総裁に再任され、衆議院の解散総選挙に踏み切らなければ、岸田内閣は長期政権となる公算が大きいと考えられます。
選挙結果は想定内、株式市場は経済対策第2弾などを見極めつつ、将来の財政健全化も注視
株式市場は、参院選での与党勝利と岸田政権長期化の可能性について、相応に織り込んでいたと思われ、選挙結果は想定内とみられます。それでも、7月5日付レポートで解説した通り、首相の在任期間が長いほど、日経平均株価は上昇しやすい傾向があることから、今回の選挙結果が、長期的な株価押し上げの一因になることも期待されます。また、岸田首相は、当面、財政拡張と金融緩和のスタンスを維持すると予想します。
目先の注目は、経済対策第2弾であり、国内の物価高や新型コロナの感染再拡大で、景気テコ入れの要素が強まることも考えられます。また、年末策定予定の「資産所得倍増プラン」では、少額投資非課税制度(NISA)改革などが検討される見通しです。株式市場はこれらの具体的な中身を検証しつつ、将来的な岸田首相の財政健全化の動きや、日銀総裁人事にも注意を払うことになると思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『参院選の結果と日本株への影響を考える【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト