(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2022年6月27日に公開したレポートを転載したものです。

世界トレンドから孤立する日銀の「金融緩和政策」

世界の中央銀行が軒並み金利引き上げに走るなかで、唯一緩和姿勢を厳守している日銀との対比が鮮明になっている。この世界トレンドから孤立したイールドカーブコントロール(YCC)という日銀政策に無理があるとするヘッジファンドの投機ポジションが、市場を揺さぶっている。

 

英ヘッジファンド、ブルーベイ・アセット・マネジメントは10年国債利回りを0.25%に抑えるYCCは円の急落を招き、日銀は円安阻止のためにYCC政策の放棄と10年国債利回りの上昇を容認せざるを得なくなると読み、日本の国債売りを仕掛けている。

 

中央銀行の政策にヘッジファンドがチャレンジするという事態はG・ソロス氏のイングランド銀行(BOE)への挑戦を思い起こさせる。

 

今回も1992年当時と同様に日銀がヘッジファンドに敗れ金融政策の変更を余儀なくされるとの観測が市場を不安定にしている。

 

実際、日銀のYCCの外にある超長期債利回りは、急上昇し、市場金利に大きなゆがみが表れている。世界金利のアンカーである日銀がヘッジファンドに敗れて政策変更を余儀なくされれば、その連鎖は世界金融市場を揺り動かす。円売り、日本国債売り、株売り、まさに日本売りだ、日銀売りだ、という投機筋の声が聞こえる。

 

[図表1]主要国の長期金利
[図表1]主要国の長期金利

 

[図表2]日本国債のイールドカーブ
[図表2]日本国債のイールドカーブ

 

しかし、今回の日銀は1992年当時のBOEのようなジレンマに陥ってはいない。

 

1992年イギリスは通貨安を容認するか、景気対策としての金利引き下げをあきらめるか、の二律背反状況にあった。1990年にイギリスは為替変動幅を基準レートの±2.25%に収めることを義務付けるERM(=European Exchange Rate Mechanism 欧州為替相場メカニズム)に加盟しており、通貨安を引き起こす利下げという選択肢はなかった。

 

しかしイギリスがERMの盟主であるドイツによって金融政策を縛られるという状態に持続性はないと読んだG・ソロスはポンド売りを仕掛け、イギリスは利下げを選択してERMから離脱した。ソロス氏は巨額の利益を手に入れた。

 

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