(※写真はイメージです/PIXTA)

相続の際、もっともトラブルが起きやすいのは「不動産に関わる遺産分割」だといわれます。とくに投資用不動産など複数の不動産を所有する場合、相続人間の話し合いがつきにくくなります。そんな不動産相続のトラブル事例や円満解決策について考察します。

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    一見円満解決風な「共有」がいちばんコワい!

     

    相続税の申告と納税は、被相続人の死亡を知ってから10カ月以内に行うことになります。亡くなった悲しみに暮れていれば10カ月などあっという間に経ってしまいます。期限を過ぎれば追徴課税などのペナルティもありますので、迅速に相続人同士の話し合いを進める必要があります。

     

    相続人数の均等分割で話が付けば良いのですが、被相続人と長年同居し身の回りの世話をしていた人や、被相続人の医療施設通院や入院時の世話をしていた人などは「相続分を割り増ししてほしい」と要望するかもしれません。

     

    それに対しほかの相続人が承諾せず話し合いが平行線を辿れば、最終的に共有登記を選ぶしかありません。しかしこの共有がもっとも危険な選択肢なのです。

     

    共有の初回は2~3人の兄弟姉妹だけですが、この後年月が経ち、その中の誰かが亡くなってその子どもたちへと相続されれば、不動産の所有権者はネズミ算式に増えていきます。

     

    仮に初回の相続人を3人としてそれぞれに2人の子どもがいたとすると、2次相続時の所有権者は6人に増えます。その6人にそれぞれ2人の子どもがいたら…際限ありません。

     

    土地や建物の登記簿謄本を見ていると、意外と共有を選んでいる家族が多いことがわかります。共有は相続問題を未解決のまま先延ばしし、子や孫にその後始末を押し付けるようなものです。大人になると、「イトコやハトコは音信不通でどこに住んでいるかもわからない」なんてことは当たり前になります。

     

    不動産を売るにも貸すにも、共有する所有権者と連絡がつかない限り何もできません。こういった背景から昨今の「空き家・空き地問題」も深刻化しているのです。後の世代に問題を持ち越さないためにも、どこかで白黒はっきりさせる必要があります。

    共有者の破綻で「買取業者の餌食」に…

     

    共有でもっとも厄介なのは、所有権者の1人が単独で持ち分不動産を第三者へ売却してしまうことです。都市部に建つ小規模テナントビルの相続問題を例に説明します。

     

    このビルの最上階には大家(被相続人)宅があり、そこが相続人たちにとって実家でもありました。実家であり、また立地的にも資産価値が高い不動産のため相続人同士の主張・要望が折り合わず、最終的には共有登記で決着させるしかありませんでした。

     

    しかしその後、相続人の1人が経済的に困窮し、テナントビルの持ち分を相談もなく売却してしまったのです。近年は「持ち分買います」と謳う相続不動産買取専門の不動産業者も増えています。業者は足元を見て安値でしか買い取りませんし、買取後はほかの所有権者に対し高値で買い戻すよう売り込んでくるか、またはそれぞれの持ち分を安く売り渡すよう要求してきます。

     

    都心の一等地にある中小規模不動産はもっとも買取業者の餌食になりやすい物件です。未だに「共有なら揉め事もなく円満におさまる」と思い込んでいる富裕層の方々はお気を付けください。円満と見せかけながら、その裏には未来への地雷が隠れています。

     

     

    ※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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