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遺産分割協議、1人でも異論が出れば…
遺産が現金だけなら、1円単位で分割できるのでトラブルは起こりません。遺産相続でもっともトラブルになりやすいのが「不動産の分割」です。
複数の不動産を所有する富裕層の遺産分割は複雑です。戸建ての自宅、自らが商売をしていた店舗ビル、賃貸に出している一棟テナントビルなど、使用目的や建物規模、収益性など物件属性にばらつきがあるため、現金のように均等分割することはできません。
★トラブルケース➀
実家の一戸建て、店舗ビル、一棟テナントビルの3つの不動産を兄弟3人で相続したケースです。
実家を長男、店舗ビルを二男、テナントビルを三男に振り分ける前提で話し合いがはじまりました。長男が被相続人と共に実家で暮らしていたのなら、相続後も生活状態を変えずにそのまま暮らせるので良いでしょう。
二男は被相続人の仕事(店)を手伝っていたので、二代目経営者として店舗を引き継げば良いでしょう。問題は三男のテナントビルです。収益性が高いため定職に就かなくでもある程度の生活費を得ることができます。ある意味「うまみ」のある不動産を末っ子が単独で相続するとなれば、上の2人が黙っているわけがなく、話し合いは波乱が予想されます。
★トラブルケース②
相続人の姉妹2人が実家の一戸建てと一棟テナントビルを相続したケースです。
実家を既婚の姉が、独身の妹がテナントビルを相続する前提で話し合いをはじめたところ、姉が夫の名字で実家の土地・建物を継ぐ(登記簿上の所有者の名字が変わる)ことに妹が違和感を覚えるとして、逆に姉がテナントビル、自分が実家を継いで実家の名字を残したいと主張したため話し合いが長期化しました。
相続人のうち誰か1人でも異論を唱えれば、相続は成立しません。これが不動産の相続は現金より厄介になる所以です。
不動産相続には4つの選択肢がある
兄弟姉妹の多い家族にとって不動産相続は将来的な悩みの種です。できることなら、親(被相続人)が元気なうちから話し合いをはじめ、ある程度の方向性を定めておいた方が賢明でしょう。そこで、相続不動産の分割方法について説明します。
現物分割
相続人が所有していた不動産毎に分ける方法です。前述の事例をもとに説明すると、3つの不動産(実家、店舗、テナントビル)を3兄弟で分けたり、2つの不動産(実家、テナントビル)を姉妹で分けたりする方法です。
代償分割
兄弟姉妹のうち誰か1人が不動産の相続人(=登記所有権者)となり、その他の兄弟姉妹に対し遺産分割分相当の対価(現金)を支払う方法です。この場合、登記所有権者となった人に数千万円~数億円単位の現金支払い能力が必要になります。
換価分割
相続人全員合意の上で不動産を売却し、現金化して分割する方法です。この場合、登記簿上の登記所有権者が被相続人名義のままでは売却できないため、まずは相続人全員が持ち分割合で登記所有権者となるか、または誰か1人が代表して登記所有権者となる必要があります。
共有
現物・代償・換価のいずれの分割方法をもってしても相続人同士の話し合いがまとまらないまま相続税の申告・納期限を迎えてしまった場合は、最終手段として各相続人の「持ち分割合の共有」として所有権移転登記を行うことになります。