ポイントは「音読するように黙読する」
実は、問題文を読み飛ばしがちな子でも、小4の間はよい成績をとれることがあります。
しかし、塾のテキストや市販の問題集に載っている典型的な問題はラクラク解けるのに、ほんの少しだけ条件や要求されている結論が異なると、まんまと引っ掛かってしまうことが増える時期が訪れます。それが、多くの場合、小5の夏以降です。
そうなってはじめて、親御さんはお子さんが伸び悩んでしまう理由を探し始めます。
ただ、その理由が、問題文をよく読んでいないという、ごく基本的で単純なことだとは夢にも思わない。もちろん、本人もそれが原因だなんて思いません。ですから、さらに勉強量を増やしたり、難度の高い問題にトライするなどします。そうこうするうちにどんどん「アタフタさん*」度が増していくのです。
*…大量の宿題に追われ、毎日「アタフタ」しながら勉強を繰り返しているタイプの子ども
では、どう読めばいいか。ポイントは、③④の「音読するように黙読する」ことです。
音読は音を出すものなのに、音を出さない黙読をするとはどういうことか。
たとえば、「ケントくんとルミさんは学校から図書館まで午後2時10分に同じ速さで歩き始めました。ケントくんは学校を出て400m歩いたところですぐに同じ速さで引き返すと…。同じ時刻に出発して、同じ速さで、か。それで…」というように、ブツブツとひとり言をいながら読んでいるような雰囲気の読み方です。
「ルミさんはその5分後に図書館についたんだから…これは、ちょっと難しいぞ!いきなり式はムリだな!」と、問題文を咀嚼しようとしながら読んでいるのがひとり言となり、頭の中で音となって響いているような感じになります。
国語の授業で教科書を音読するようにスムーズにはいかず、つっかえたり、独白が混じったりします。実際に声に出してもよい状況ならそうしてもいいし、声が漏れない程度に口の中でブツブツ、モゴモゴしているのでもかまいません。
そのように、「音読するかのように黙読」していると、算数や理科ならば「こういう条件なんだな」「ということは、今わかっていることは~で、…がわからないんだ」と、納得しながら読んでいけます。
これが、「考える作法」の「自問自答の言葉」にもつながります。
「音読するかのように黙読する」作法も、親御さんがお手本を見せてあげるといいですね。隣で、ブツブツとひとり言を言いながら読んでいるかのような雰囲気を醸し出してみると、子どももゆっくり読むことの大切さがわかってきます。
「音読するかのように読んでいたら、勉強のスピードが遅くなってしまいませんか?」と、親御さんから質問されることがありますが、最初は遅くてもいいのです。「音読するかのように黙読する」作法が身につけば、引っ掛け問題に惑わされることもなく、また、長い問題文であっても最後まで読み通せ、結果的に得点に結びつけていくことができます。
西村 則康
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表