自由になったミャンマーへの入国が国境を一気に開いた
東西経済回廊はいよいよ最後の国ミャンマーに到達する。ミャンマーに陸路で行き来できるようになったのは2013年のこと。それより以前は、4カ所の国境ポイントのみの、1日限定入国しかできなかったのだ。ミャンマー国内を旅するには、まず空路で入国する必要があった。
それが民主化の進展、AECを念頭に置いた回廊の整備もあり、長年閉じられていた国境が一気に開いた。4カ所の国境ポイントのうち3カ所がそのまま国際国境に格上げされ、第3国人でも通過ができるようになった。
北からタチレク/メーサイ、ミャワディ/メーソート、そして、船で15分ほどの港同士である、コータウンとラノーンだ。加えて、新しい港と経済特区の開発が予定され、日本政府も力を入れているという街・ダウェイに向かうティーキー/スナロン国境が新設された。
タイの支援で造成された新しいバイパス道路
なかでも、もっとも注目を集めているのがミャワディ/メーソートの国境だろう。東西経済回廊はここを通過する。このエリアの通行に長く立ちはだかってきたのが、少数民族武装勢力と、一部区間の悪路だった。しかし、2015年10月には、カレン族の武装勢力と政府の間に停戦合意が結ばれ、11月には問題のエリアに新しいバイパス道路が開通した。
この道は、ミャワディから25キロほど進んだ地点から、コーカレイまでの約40キロを結ぶもので、タイの支援で造成された。旧道は、路幅わずか3メートルほどの区間があるため、隔日の片道通行を余儀なくされており、舗装の剥がれや陥没穴も多く、途上で故障車が出ると、修理が済むまで後続車も足止めとなる。
それに対し、新道はハイクオリティの舗装道路で、対面2車線とはいえ、追い越しも可能な道幅だ。旧道では最短でも90分はかかっていたのが、わずか40分ほどに短縮された。
南シナ海とインド洋を結ぶ最短ルートとしての期待
残る問題は、コーカレイ以降の整備だが、ここにもADB(アジア開発銀行)から約1億米ドルの投資が決まった。また、道中に架かる3本の古い橋についても、日本政府が円借款事業での架け替えを予定している。こうした支援策からも、東西経済回廊に注がれる国際社会の熱い視線を感じ取れる。
地元住民によると、新道開通以降すでに大型トラックの通行が増えてきているという。しかし、道路以上に期待するのは、東西経済回廊の開通を見越し、周辺エリアで計画が進む複数の工業団地だ。ミャンマー人は簡単な手続きでタイヘ自由に出入りできるし、給料もタイのほうが3倍近く高い。いまでも毎日たくさんの人が国境を越え、タイ側で違法に働いている現実がある。だからミャンマー側で合法的に働ける場所ができることは大歓迎なのである。AECの始動と経済回廊は、このエリアの人々に明るい未来を運んでくることができるだろうか。
こうして東西1450キロに及ぶ旅は、インド洋に出て終着点を迎える。ベトナム・ダナン港から、ミャンマー・モーラミャイン港が結ばれたわけだが、さらにインフラの整備が進めば、この回廊は南シナ海とインド洋を結ぶ最短ルートとなる。マレー半島を迂回するよりも早いのだ。
しかしそのためには、とくにラオスとミャンマーでの道路の拡充が必要だ。モーラミャイン、ダウェイでは大型船の停泊ができる深海港の整備もしなくてはならない。しかしようやく道はつながった。インドシナ半島の新しい時代を担う回廊へと成長していくだろう。