「バイオガソリンの承認」わざわざ地方で発表したワケ
ロシアのウクライナ侵攻開始により、またホワイトハウスにこもりきりにならざるを得ない期間を経たが、4月後半からは積極的にワシントンを離れるようになっている。
中西部アイオワ州を訪れた際は、E15(トウモロコシから取ったエタノールを15%混ぜたガソリン)の承認を発表した。
ガソリン価格は高騰しているが、E15というエタノール混合ガソリンを使用することにより1ガロンあたり10セント安くなる。そして、アイオワ州はトウモロコシが生産される農業州だ。ホワイトハウス執務室から出て、有権者の前で発表することにより支持率回復を図ったのである。
さらに5月12日、中西部イリノイ州では農場を訪ねた。そこでは食料品の価格高騰を受け、「肥料の生産を向上させるために2億5,000万ドルの支援をおこなう」と農家への援助を発表している。
多くの国民が不満を抱えるインフレへしっかりと目を向け、アメリカ各地で直接語りかけようとする姿勢が見てとれる。
支持率を伸ばしたいならインフレに集中すべき
さて、本気で支持率を伸ばそうとするなら、バイデン氏は国内のインフレ問題に集中するのが自然だろう。
しかし、国内問題はインフレに力を注いでいるとはいえ、海外の問題・ウクライナもかなり重視しているのが実情だ。
今回の戦争を「民主主義vs専制主義」として捉えており、民主主義を守る強い使命をもっているためである。バイデン氏は、副大統領のときから民主主義vs専制主義という対立構造を持ち、危機感を抱いている。
では、それほどにウクライナ侵攻を重視するバイデン大統領は、なぜ米軍を派遣しないのだろうか。連載第2回ではその理由とともに、大統領とアメリカ社会を読み解いていこう。
明治大学政治経済学部 教授
海野 素央